スーパーで季節を感じない

2012年3月9日

長い間の昏睡状態から目覚めて、スーパーに行ったとしよう。気温がわからず、人々の服装を見ず、また食品の賞味期限を調べず、ただ売られている野菜や果物や鮮魚などの商品だけで、季節がわかるだろうか。日本のスーパーだったら、春夏秋冬の区別はつくだろうが、英国のスーパーだったら無理かもしれない。

なにせ、英国のスーパーでは季節を感じることがない。売られている食品はほぼ一年中同じで、そして一般的に種類も少ない。例えば果物。バナナはもちろんだが、みかんなどの柑橘類、リンゴ、西洋梨、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーなども、ほぼいつも販売されている。野菜も同じ。特にパック詰めになっていて、すぐに食べることのできるサラダなどは年がら年中同じ。そして魚となると、取り扱われている種類が少ない。鮭、鱈、鱸、マグロ、カジキなどにエビが売られている程度。

比較的少ない品数をどうやって一年を通して確保しているかというと、例えば野菜ならハウス栽培ではなく、世界各地からの空輸に頼っている。前述のパック詰めのサラダはケニアなどアフリカで生産されていることが多い。収穫されたら、すぐに英国に空輸される。野菜は水を大量に要するから、サラダは食べ物の輸出だけではなく、水の輸出でもあることを考えると、持続性あるような産業ではないようにも思えるのだが、どうなのだろうか。果物は、南米産であったり、アフリカ産であったり、中東産と季節によって生産地は変わる。魚介類も、ときとして近海物が販売されているが、多くの場合は遠洋物。

便利と言えば便利であり、好きな食べ物を一年を通して買うことができるのは、良いことかもしれない。でも、食べ物で季節を感じることができないのは、なんとなく物足りないような。