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旅行記:ロンドン・グライフスヴァルド 
作成2006年9月27日:最終更新2008年8月7日
2006年9月にロンドンから国際高速列車ユーロスターでパリまで行き、その夜ベルリンまで寝台列車に乗り、最後に特急でドイツ北東部にあるグライフスヴァルドに到着するまでの雑感をまとめた。
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時刻表
9月24日
 10時08分:ロンドン発
  Eurostar
 13時53分:パリ着
 20時46分:パリ発
  ドイツ鉄道運行の夜行列車
9月25日
 08時11分:ベルリン着
パリ・ベルリン間は夜行列車の他に、日中ではケルン経由で高速列車 Thalys  ICE で乗り換えの時間を含めて約7時間ほどかかる。予約はタリスと独仏両鉄道会社のウェブサイト上でできるが、フランス国鉄のウェブサイト(www.sncf.fr)が便利だ。

大学の博士課程で17世紀ドイツ史を専門としているため、半年から一年ほどドイツ北東部メックレンブルク・フォアポメルン州 (Mecklenburg-Vorpommern) のバルト海に面した小さな大学町グライフスヴァルド (Greifswald) に住むことになった。人口5万人で大都市に慣れている人間には田舎に感じられる。そのグライフスヴァルドまでロンドンからパリ経由で行ったことをここに書いておく。

このグライフスヴァルドという町はベルリンから電車で2時間半ぐらい、というのはわかっていたので、飛行機でロンドンからベルリンにしようかと最初思っていた。しかし近頃のテロ対策の一環で持ち込める物が厳しく規制されているうえ、荷物が重すぎて超過量分の料金を払うことになるのは金銭的に無理があるので、飛行機以外の乗り物でベルリン行きにしようと決めた。乗り物は好きだが、飛行機は環境にも良くないしできれば避けたいものだ、と常々思っていた。ロンドンからベルリンまで、飛行機を使わないとすれば電車やバスという方法がある。確かに走り泳ぐこともできようが、そこまでの体力も気力もない。ロンドンからドーヴァー海峡をフェリー船かユーロトンネルで渡りベルリンまでいくバスがあり、出発数週間前にウェブ予約をすれば一番安上がりだ。ヨーロッパ高速バス Eurolines もあればドイツの Berlin Linen Bus もあるし、出稼ぎする人のためにベルリンを経由するポーランドのバス会社も多くある。でも荷物を抱え、20時間以上バスに乗り続けるのはあまりにも疲れる。飛行機が駄目バスは嫌と消去法で電車となった。さて電車だが2経路ある。ロンドンのリヴァプール・ストリート駅 (Liverpool Street) からハリッチ (Harwich International) まで行って、高速船に乗り換え、オランダのフック・ファン・ホラント (Hook van Holland) 到着後オランダの鉄道でアムステルダムまでいき、そこからベルリンまで行こうかと考えたのだが、どうも一日では到着できそうにない。それに決して安くない。一日でロンドンからベルリンまで電車で行くとしたらロンドン・ブリュッセル・ケルン・ベルリンという方法がある。でも日中にグライフスヴァルドに着かないといけないので、これも無理だ。ブリュッセルで夜行列車に乗る手もあるが、出発が真夜中ぐらいになるうえ、ブリュッセル南駅は夜になるとあまり感じが良くない。高めだがロンドンからパリまでユーロスターに乗って、パリからベルリンまで夜行列車で、という日程をたてた。切符はフランス国鉄 (SNCF) のウェブサイトで買った。数年前、学部生のときに1ヶ月かけてヨーロッパ中を電車で旅行したことがあり、それ以来、景色を楽しむことができ距離感がつかめる列車がヨーロッパ旅行には最適だと思っている。

ヨーロッパというのはけっこう小さい。なにせ24時間内にイギリス・フランス・ベルギー・ドイツと4カ国を電車で通るのだ。日曜日の朝、ロンドンを出発し、昼過ぎにパリ北駅到着。夜の列車まで時間がある。北駅の地下にある、金属探知機のあとにあるコインロッカーに荷物を置き、さあどこに行こうか、と考えた。美術館や博物館というのは時間の余裕がないと楽しめない。日曜日なので開いている店もそう多くない。天気も生憎小雨気味だ。地下鉄に乗って、シャテレ駅で降り、セーヌ河を渡り、ラテン街を歩き回った。レストランやカフェが多く並び、その間に出版社、本屋、古本屋がある。17世紀の貴重な本がショーウィンドウに展示されている。いい本とうまいコーヒーがあれば何の文句もないという性質なので、この場所が気に入り、あてもなく数時間も歩いた。さてパリの中心部に何軒ものスターバックスがあったのには少々驚いたし、ある意味残念だった。ついにフランスも世界資本に屈したのだろうか。イギリスの場合、スターバックス進出以前はおいしいコーヒーが飲めるところは少なかった。さすがにまずい紅茶というのはあまり無かったが、まずいコーヒーというのは日常茶飯事だった。パリにはおいしいコーヒーを出すカフェがたくさんあるから、いくらスターバックスでも出店はできないかもしれないと思ったが、マクドナルド同様、フランス人は表上軽蔑しながら実際はよくスターバックスのコーヒーを飲んでいるのかもしれない。それともアメリカやイギリスからの観光客を相手にしているのだろうか。そんなことをぼんやり考えつつ、パリ名物の愛想の悪いウェイターに頼んだコーヒーをゆっくり飲んだ。フランスの多くのレストランやカフェの会計にはチップが含まれている。会計の一番下の部分に Service compris と書いてあるはずだ。愛想が悪くなるのも当然だろう。それでもアメリカ人やイギリス人は、そんなことを知らないから、サービスの悪さを嘆きつつもチップを置いていく。もっともつねに不機嫌なウェイターというのはだいたいパリだけで、地方に行くと、フランス語さえ話そうとすればかなりいい態度で接してくれる。コーヒー一杯で充分粘ったあと駅に向かう。過去に一度寝坊して飛行機に乗りそこなったことがあるので、いつも早め早めに空港や駅に行ってしまう。そうしないと落ち着かないのだ。いくらなんでも2時間半を駅内で待つとなると退屈する。小腹が空いたのでパリ北駅前の客引きのいるブラッセリーでオムレツを食べた。不味くはないが、イマイチだった。フランス語はあまり難しくなければ読める程度で、話すことは苦手だ。もうちょっとフランス語が上手ければ、もっと楽しめるところだが、言語を学ぶのは時間がかかるし、ドイツ語とラテン語をまずどうにかしないといけないので、どうもフランス語は後回しにしてしまう。

パリ・ベルリン間の夜行列車はドイツ鉄道が運行する。フランス国鉄のイスやベッドははやわらかいが、長時間座ったり寝ていたりすると柔らかいがため逆に疲れる。ドイツの車両は人工学的に設計されていて、ベッドは少々硬めで眠りやすいし体に負担がかからない。このようなことにかけてはドイツの技術力は評価すべきだ。どうも94号車の車掌、フランス語がわからいようだ。英語もかなり怪しい。それでも何とかなるのだから面白いものだ。同じコンパートメントの乗客はワシントンで働いてドイツとフランスにいる家族に会いにきたアメリカ人と自転車を含め荷物がやたらに多い学生風のドイツ人だ。午後9時前にパリ発車でブリュッセルまで3時間半ほどだ。フランス北東部のリールは産業革命以降重工業の中心地だったと聞いている。隣のベルギー・ワローン地方も同様に重工業が発達したところだが、20世紀後半の脱重工業化によって失業率が上がり、社会問題が多いらしい。リールはフランス・ベルギー国境近くだ。石炭と鉄鋼という産業があり、ヨーロッパ大陸で19世紀に一番鉄道網が発達したのがベルギーだ。そのベルギーの首都ブリュッセルはグルメにとって一番いいところだろう。ミシュランの星がついたレストランが何軒もある。高級レストランは値段が高いかもしれないが、一体だれが翻訳したのだろうか、というような日本語メニュー片手に日本語で話しかけてくる客引きのいるレストランとは比較できない食事、ワイン、サービスと雰囲気が楽しめる。もちろん「ベルギーといえば」といってもいいほど有名なチョコレートもおいしい。そのためか歯医者も多いらしい。この鉄道網や華麗な建物は、ベルギーの過酷ともいえるコンゴ植民地支配の利益から作られたものだ。小国であるためか、ベルギーのあまり語られない「負」の歴史だ。リエージュを過ぎたのは覚えているが、ベルギー・ドイツ国境前に眠ったのだろう。現在ベルギーは東西横断の高速鉄道化を進めている。工事でよく数分間停まった。目が覚めたら進行方向が変わり数年前万博があったハノーファー着数分前だった。フランス・ベルギー・ドイツ3カ国はシェンゲン協定締結国なので、国境でパスポートを見せる必要もない。シェンゲン協定以前は朝2時に国境警備隊に叩き起こされたものだ。さてドイツは2年ぶりだ。ベルリン中央駅はワールド・カップ直前に完成したところで、使いやすい。この前ベルリンに住んでいたときは、まだ建設中だったので、変貌ぶりに驚く。高架線に東西方面のプラットフォームがあり、地階に南北方面のプラットフォームがある。ベルリンには常に新しい建物があり、数ヶ月いないとどうも都市の景観がかなり変わっているということがよくある。駅構内の店というのはイギリスやアメリカでよくみられるものだった。ここにももちろんスターバックスやマクドナルドがある。どうもドイツらしくない。2時間コーヒー一杯で粘ったあと、シュトラルズンド(Stralsund)行きに電車に乗り、少々の遅れはあったものの無事にグライフスヴァルドに到着した。目下、住民登録や外国人登録、大学の入学手続き、銀行口座開設などでかなり忙しい。

数週間後、ロンドンに行かなければならないので、また電車の旅になりそうだ。もっともベルリン・パリ・ロンドンと言った優雅なものではなく、高速鉄道を乗り継いでベルリン・ケルン・ブリュッセル・ロンドンということになるだろう。

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