#23

比較屋

世の中には芸術やスポーツを比較して優劣やけちを付けて悦に入る面倒臭い人が存在する。

他人に危害を加えず迷惑をかけていないのであれば、人間好きなことをすれば良く、趣味趣向は個人の自由なはずだが、なぜだか比較して優劣やけちを付けたがる面倒臭い人が存在する。偏見かもしれないが⋯⋯芸術やスポーツや趣味の種類を格付けして悦に入っている自称(つまりは似非)文化人は、自分が好むものを高尚で優れたものだと言い張ることによって、自己陶酔に浸っているだけなのではないかと疑ってしまう。また何かを褒めるのに何かを貶さなければならない思考の持ち主なのだろうか。物や事象に対してならまだしも、人の評価も誰かを下げることによってしか上げることができないのはよろしくない。

大学生が酒を飲みながらいろいろ熱くも青臭くも語るのは微笑ましいし、究極的に無駄だが若いうちにどんどんやるべきだと思うが、大の大人が尊大にああだこうだ論じるのは何か滑稽に見えてしまう。芸術やスポーツや趣味の分野が多様化した現在において、高尚から低俗あるいは一流から三流というようなピラミッドで語ろうとする人間は時代錯誤も甚だしいような。〇〇が好きな人は必ず△△だと意味不明に決めつける暴論というか偏屈な偏見も存在する。

【写真】ベルリン・ドイツ・オペラ (Deutsche Oper) の外観。2019年10月20日撮影。

私はクラシック音楽が好きで、オペラを鑑賞するのが楽しみの一つ。オペラ好きになったきっかけは、25年程前の学生時代に留学先のベルリンで歌劇場に足繁く通っていたから。特にドイツ・オペラ Deutsche Oper に行っていた。当日に券が残っていれば、学生証を提示することで一番良い席が格安で買えた。映画館に行くのと同じような金額だったと記憶している。2019年に久しぶりにベルリンを訪れた際に『カルメン』を鑑賞して、感慨深かったというか非常に懐かしかった。上に掲載した歌劇場の外観の写真は公演数日前に券を前もって買ったときに撮影。

友人は同時期の25年程前に似たように留学先のロシアでバレエを何回も観て、バレエ好きになって今でもよく鑑賞している。時々誘われて一緒に鑑賞する。私はバレエの素晴らしさをいまいち理解できていないが、それは単に私の感受性と美的感覚と知識の欠落の問題。でも友人が素晴らしいバレエ公演を観て大いに感動することに共感できる。

オペラもバレエも他の音楽や演出がある芸術と変わりがないし、特に高尚なものとは考えていない。歌劇場に行くと、オペラが好きというよりも、高尚な芸術であるオペラを着飾って鑑賞する自分が好きな人がちらほらいるような気がしてならない。それも楽しみ方の一つで否定されるべきではないが、私からすると少し珍妙。人はそれぞれ違う芸術表現に興味や感動を覚えるもので、自分の感性に合うものに出会えれば人生が豊かになる。オペラやクラシックのコンサートに行くのと、バンドやアイドルのライブに行くのに、本質的な差はない。

スポーツも自分の好きな競技を褒めて、他を貶す人がいる。例えば、野球とサッカー、どちらがスポーツとして優れているなどというのは不毛な議論だろう。野球のハイライトで圧巻のピッチングあるいは特大のホームランを観て興奮したり、サッカーのハイライトでゴールまでの動きや連携やシュートの技術などを観て高揚したり、違うスポーツを観戦するのは楽しい。私には良さがあまりよく分からないスポーツもある。例としてバスケットボール。ルールは分かるが、私にはちょっと展開が速すぎるのかもしれない。でも他の人が観ていて面白いと思って興奮するのは十分に分かる。

【写真】ロンドン・ウィンブルドン (AELTC) のセンター・コート。屋根が閉まった状態での男子シングルス準決勝ノバク・ジョコビッチ対ラファエル・ナダル。2018年7月13日撮影。

実際に競技場で観戦するスポーツにテニスとクリケットが挙げられる。残念ながらテニスはここ2年クリケットはもう数年、時間の都合などで行けずじまいになっている。テニスはウィンブルドンの会場近くに住んでいるためで当日に時間があったり入場できそうだったら並んでいた。他の大会をテレビで観ることもないし、選手に特に詳しいわけでもないが、これまでに何回も素晴らしく圧倒される試合を観てきた。一番印象に残っているのは、写真にもある2018年7月13日のノバク・ジョコビッチ対ラファエル・ナダルの男子シングルス準決勝の第1〜3セット。第3セット終了時点で夜11時を過ぎたため翌日再開された試合で、事実上の決勝戦だったとも言われている。

【写真】ロンドン・ローズ・クリケット・グラウンド (Lord’s Cricket Ground)。イングランド対ニュージーランド。2015年5月25日撮影。

クリケットは国際試合が5日目までもつれ込んだ時に行く。悠長なスポーツ。基本的に試合は毎日午前11時に始まり、午後1時で昼食の時間に。昼食後の1時40分から3時40分まで再び試合を行い、3時40分から4時まで午後の紅茶の時間で、4時に試合再開し6時まで続き、場合によって更に30分だったり1時間延長する。それを5日間行って引き分けになることもしばしば。でも時には2日や3日で終わってしまうことも。短時間に試合が変わることがあるし、目を離すことができない。ちなみに掲載した写真はもう大分前の2015年5月25日に撮影した。

おじさんになって、このまま健康で長寿になるとしても、人生の半分ほどはもう生きただろうか。さすがに今日明日に死ぬなどとは思っていないが、若い頃に比べると先が短くなっている。これまで無駄に歳を食って、まだまだ知っていることより知らないことの方がはるかに多い。歳を取るごとに偏狭になるのが怖く、常に新しいことを学びたいし刺激を受けたいと思っている。これまで食わず嫌いにしていた物事にも興味を持つべきかもしれない。芸術でもスポーツ観戦でも本でも映画でも。もし何かを薦める記事や動画や番組がある場合、他に比べて優れているだとかランキングの上位にあるからだとか評論家が評価していたからだとかではなく、なぜ面白いのかどうして好きなのか熱く語っているほうが読んで見て聞いて楽しい。他を貶している比較屋の内容は、受け手として時間の無駄に過ぎない。