ロンドン日記

オミクロン株とクリスマス

今年のクリスマスはどうなるのだろうか。英国では6月末からほぼ毎日数万人の新型コロナウイルス感染症の新規感染者が報告されてきたが、ワクチン接種率が上がり、入院を必要としたり重症化する罹患者は減り、医療資源の逼迫の危険性は遠のいていた。それでも死者数は8月末から7日間移動平均で1日100人を超えている。新型コロナウイルス感染症が長引き、社会全体として人の死に鈍感になったような気がする。もう少し危機感があるべきではと思う数値。英国政府はワクチン接種の対象年齢を引き下げたり、2回目3回目の接種を奨励することによって、集団免疫獲得の達成あるいは集団免疫に近い状態を目指す方針。しかしオミクロン株によってそれが変わるかもしれない。

基本的に歴史は繰り返さないという考えなのだが、どうしても昨年のことを思い出してしまうし、相似点はいくつかある。昨年2020年12月2日に4週間にわたるイングランド全土の第2次ロックダウンが解除されて、状況に応じて地域ごとに3段階の制限が設けられた制度に移行したが、すでにイングランド南東部を中心に高い水準で感染者が確認されていた。後にアルファ株と名付けられる変異株の感染が拡大していた。そのため12月19日に3段階の最上級のレベル3を更に超えるレベル4の制限がロンドンとイングランド南東部に12月21日から適用されることが発表された。事実上ロックダウン。英国でクリスマスは家族や親戚が集まる日で、日本の盆や正月に似ている。そのため第2次ロックダウン解除に先立つ11月24日に、ボリス・ジョンソン首相は3世帯がクリスマスの時期にあたる12月23日から27日まで屋内で集まって過ごせると発表していたが、これを覆したことになる。それだけ事態は深刻だった。12月26日にさらにレベル4の適用範囲が広がり、2021年1月6日にイングランド全土が第3次ロックダウンに入った。後手に回る対応だった。

2021年のクリスマスまで2週間半の時点で、新規感染者数が増加していて、オミクロン株の市中感染が確認されている。変異株の出現によって感染が広まっているのは、昨年のこの時期の状況と似ている。英国の場合、今から入国を制限したところで、オミクロン株の流入を防ぐことも遅らせることもできないだろう。どれだけ市中感染・家庭内感染を抑えられるかが焦点。先週11月30日にイングランドでは商店や公共交通機関などでのマスク着用が再び法律で義務付けられたが、ここ数日買い物に行ったところ、マスク着用率は上がったものの、マスクをしていない人も多く、中にはマスクなしで咳き込む人もいた。マスクをしていない人が全員正当な理由あって着用していないとは考えられない。もしオミクロン株の感染力が強く、無責任としか呼べない人たちがいれば、いくら細心の注意を払っても罹ってしまうのではないかと悲観している。買い物は昨年の一時期のようにオンラインで済ませて配達にしようか迷っている。私はワクチンを2回接種しているし、高齢ではなく基礎疾患もないので、罹っても恐らく大丈夫だろうが、これまで自分なりにできることはやってきたつもりなので、デルタ株だろうがオミクロン株だろうが罹りたくない。昨年との決定的な違いはワクチンの存在。しかしワクチンのオミクロン株への有効性が低下していれば、昨年のように今後病院で治療を要したり重症化する罹患者がクリスマス前に大幅に増えるだろう。そうなると再びロックダウンが必要になるかもしれず、遅きに失した対応になってしまう。2年続けてクリスマスらしくないクリスマスになってしまう。

去年の今頃は「この冬を乗り越えれば」と思っていた。今度こそ「この冬さえ乗り越えれば」と望み、そしてワクチンがオミクロン株に対して有効であることを願うしかない。来年2022年1月には3回目の接種ができるはず。空耳か鬼の笑い声が聞こえてきたような⋯⋯。