ロンドン日記

宝くじを買う

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【更新内容】写真を追加

先日いろいろと片付けていたら、棚から牡丹餅ではなく、どこからか1ポンド玉が落ちてきた。現在の為替レートで£1は約155円。£1は100ペンス。マクドナルドのチーズバーガーが99ペンスなので、日本の140円と比べると英国の方が高いがそんなに差はない。でもこれは英国のマクドナルドでチーズバーガーが saver menu の1品として安くなっているから。ビッグマック単品を比べると日本390円に対して英国は£3.29で換算すると約510円。あくまでも個人的な印象に基づくものだが、英国の£1の購買力は日本の100円と考えている。物によってはそれ以下かもしれない。英国の pound shop と呼ばれるほとんどの商品が£1の店と日本の100円ショップを比べたら、日本の100円ショップの方が商品の質が高く品揃えも豊富。つまり英国の物価は高い。

£1で何か買おうか⋯⋯街をぶらぶら歩いていると、マクドナルドでチーズバーガーを食べる気分ではなく、数多くある pound shop でがらくたを買っても恐らくゴミを増やすだけなので素通りしていたら、本や雑誌や新聞や文房具を売る WHSmith で宝くじ (National Lottery) のポスターが貼ってあるのが目に入り、出来心で宝くじを買った。宝くじはスーパーや個人商店など多くの所で取り扱われている。基本的に自分で番号を選びマークシートを塗りつぶす制度。機械に任せて無作為に選ぶこともできる。煙草は一度も吸ったことはなく、酒も最近あまり飲まなくなり、飲む打つ買うなどから程遠い小心者の小市民的生活をしているから、たまには良いだろうと理由づけて。もう何年も買っていなかったので、私の知っている宝くじとは様変わりしていた。

【写真】後日スーパーで撮影した。マークシートが宝くじごとに分けられていて記入用の台にもなっている。

スポーツや政治や天気など起こりうるほとんどの事柄を賭け事を対象にして、街で石を投げれば bookmaker に当たる英国だが、宝くじが始まったのは1994年。開始当初は1種類しかなく National Lottery と呼ばれていた。その当時1口£1で1〜49の番号を6つ選び、6つ全て当てれば特等というか1等 (jackpot) 当籤。抽籤によって当籤者がいない場合もあれば、複数の当籤者がいることもある。当籤者がいなければ繰り越されて次回の1等当籤額に足され、1等が千万ポンド単位になることも。日本円であれば十億単位。1等が当たったら、独り占めすることもあれば、他の当籤者と山分けすることがある。抽籤は週1回で土曜日の夜に行われていた。

現在は1口£2で1〜59の番号を6つ選ぶようになり、抽籤は水曜日と土曜日の週2回で、名称は Lotto になっている。1等の当籤方法は変わらず6つの番号を当てること。抽籤で6つの番号の他に bonus ball という7つ目の番号が選ばれる。6つの内5つ当たって bonus ball の数字が当たれば100万ポンド(約1億5500万円)当籤。合っている番号5つで£1750、4つで£140、3つで£30、2つで次の抽籤分1口無料(£2相当)当籤と額が固定されている。例外は5回続けて1等当籤者がない場合で、1等分の当籤金が2等以下に振り分けられる。1等当籤の確率は約4500万分の1。 始まった頃は抽籤の模様がテレビで中継されて、ある種の社会現象だった。今は落ち着いているが、毎回同じ番号を選んで買っている人も多いだろう。1口£2なので£1では買えない。

抽籤がある宝くじの種類は Lotto の他に Euro­Millions, Set for Life, Lotto Hot­Picks, Euro­Millions Hot­Picks, Thunder­ball だ。

Euro­Millions というのは、名前が示唆しているようにヨーロッパ数カ国の合同宝くじで抽籤日は毎週火曜日と金曜日。1口£2.50。1等の額がポンドやユーロで億単位つまり日本円で百億単位と巨大になることもあるが、当籤確率は約1億4000万分の1。2組の数字を選ぶ方式。1〜50の数字から5つ、1〜12から2つ選ぶ。当籤額は等級ごとに分配率が決まっているため、売上と当籤口数で変動する。さらに英国で販売された宝くじにはそれぞれ番号が付いていて、その中の1枚が100万ポンド当籤する。これも£1では買えない。

LottoEuro­Millions 当籤者は当籤金を一括で受け取るが Set for Life は違う。1等が当たれば30年間毎月1万ポンド、2等であれば1年間毎月1万ポンドを受け取る。この宝くじも番号を選ぶ形式で1〜47から5つ番号を選び、更に1〜10の Life Ball 番号を1つ選ぶ。1等の当籤確率は約1534万分の1で当籤額が固定されているため、低額の Lotto 1等を狙うよりも良いのかもしれない。私のようなくじ運がない人間にしてみれば同じようなものかもしれないが⋯⋯。抽籤日は毎週月曜日と木曜日。これで安息日たる日曜日以外毎日何らかの当籤額の大きい宝くじの抽籤が行われていることになる。1口£1.50なので、これもポケットに入っている1ポンド玉では買えない。

Lotto Hot­PicksEuro­Millions Hot­PicksLottoEuro­Millions の抽籤で番号を1つ〜5つを選び、それら選んだ番号が出たら当籤する。例えば1つ番号を選ぶと両方の宝くじとも当籤確率は約10分の1で Lotto Hot­Picks だと£6当たり Euro­Millions Hot­Picks だと£10当たる。でも Lotto Hot­Picks は1口£1で Euro­Millions Hot­Picks は1口£1.50。6割または3分の2は戻ってくるという計算になるが、結局じり貧になるだけ。一方5つ番号を選んだ場合だと当籤額は Lotto Hot­Picks 35万ポンドと Euro­Millions Hot­Picks 100万ポンドで、当籤確率はそれぞれ約83万4千分の1と約211万9千分の1。£1で買える Lotto Hot­Picks にしようかと思ったが、どれだけ数字を選ぶのか考えるのが面倒くさかった。

結局1口£1の Thunder­ball を買った。この宝くじは1〜39から5つ番号を選び、更に1〜14の Thunder­ball から1つ番号を選ぶ。1等は50万ポンドで当籤確率は約806万分の1。最少額当籤は1〜14の Thunder­ball を当てた場合で£3。抽籤は火水金土の週4回。番号は機械に任せて無作為に選んだ。翌朝抽籤結果を調べると、1〜39の1つ番号が合っていた。掠ったと言えば掠ったが、これでは外れだ。

他に様々なスクラッチくじが販売されているが、直ぐに結果が出るのは面白くない。1枚買って大金が当たるか外れれば良いが、少額当たった時が一番怖い。調子に乗って当籤分でもっとスクラッチくじを買って、擦るまで続けてしまうかもしれない。元手の£1を擦った時点でやめれば良いのだが、変に小さい成功を味わうと射幸心を擽られて、更にスクラッチくじを買ってしまうかもしれない。自分はそんな馬鹿な人間ではないと思いたいが、そんな馬鹿な人間ではないという絶対の自信はない。

宝くじを買うのは愚者のみだとよく言われる。そもそも宝くじを買った時点で馬鹿。その通り。才能は関係なく運のみで、圧倒的に凶が多い御籤を引いているようなもの。本当に当たると思って買っているというよりは、当たったらどうしようと妄想するのが楽しいから買う人が多いと思う。私はギャンブルや投機や取引の才能なんてないから、外れる前提で純粋な運頼みをしたことになる。なまじ才能の要素があるギャンブル・投機・取引の方が、自分は他の市場参加者より優れていると変な自信で思い込み、のめり込みやすく身代を潰しやすいのではないだろうか。ただ番号選択制の宝くじだと人間は番号に意味を持たせようとすることがあるので、当たれば自分の才能だと思い込む人もいるだろうか。それもあって上記のように機械任せにした。自分で番号を選んで、次回買わなかったときの抽籤で番号が揃ったらやはり悔しいだろうし、そんな考えを持つとずるずる毎回買ってしまうのが怖かった。