ロンドン日記

観兵式とエリザベス線:2022年6月2日

もうかなり前のように感じるが⋯⋯英国ではエリザベス2世在位70年を祝い、2022年6月2日(木)から5日(日)まで、様々な記念行事があって4連休になった。

祝賀初日の6月2日はなぜだか朝5時頃に目が覚めた。中年どころか老人。早起きしたのなら、ロンドン都心部に行こうと思い立った。毎年ある観兵式も今年は在位70年記念行事の一環として盛り上がるだろうから。7時前に地下鉄に乗ってセント・ジェームズ・パーク駅で下車したら、既に結構な人出でバッキンガム宮殿から真っ直ぐに伸びるザ・マルにぞろぞろ大勢の人が向かっていた。公園内の池の畔では、人間の騒々しさには気もせず白鳥が雛を従えてゆっくりと歩いていた。

ザ・マルではもう人垣ができていたこともあり、観兵式が行わて歩兵騎兵が行進するホース・ガーズ・パレードが見える場所に陣取った。三方に仮設スタンドが設置されていたが、道路を挟んだセント・ジェームズ・パークから見ることができた。

待つこと数時間⋯⋯音楽が聞こえはじめ、軍楽隊がホース・ガーズ・パレードに入場してきた。写っているのはアイリッシュ・ガーズ軍楽隊。帽子にある青い羽飾りが見分けるポイント。演奏された音楽は soundcloud.com/stateceremonialmusic/tracks で共有されている。個人的に耳に残るのは The British Grenadiers という曲。

目の前に王立騎馬砲兵・国王中隊が待機したため、この時点からはほとんど軍馬の尻の間だったり、右側に見える光景を追った。王立騎馬砲兵・国王中隊は儀仗隊で、祝砲を撃つことで知られている。また女性隊員が多いことで有名。

右側では歩兵の行進を見物できた。天気が良く陽射しも強い中、この服装だとかなり暑いのではないかと心配する。

歩兵に続き王立騎馬砲兵・国王中隊と近衛騎兵2連隊の行進。

騎兵の行進が終わり、観兵式は終了。女王はホース・ガーズ・パレードでは臨席せず、バッキンガム宮殿にいたが、コーンウォール公爵夫人カミラとケンブリッジ公爵夫人キャサリンの姿が中央の窓に見える。

ホース・ガーズ・パレードからザ・マルに移動した。観兵式が終わった後に開放された。遠くにバッキンガム宮殿が見える。大きな英国の王旗がひらめいている。女王がバッキンガム宮殿にいる場合はこの旗が掲げられ、そうでないときは英国の国旗が掲揚されている。

ザ・マルでしばらく待っていると英国空軍による祝賀飛行があった。ヘリコプターや旧式戦闘機や輸送機が頭上を飛び、戦闘機によって「70」が描かれ、曲技飛行隊のスモーク噴射で終わった。

一番大きな歓声が起きたのは戦闘機によって描かれた「70」が見えたとき。このような隊列を組むには技術が必要だと感心するが、同時にスペースインベーダーを連想してしまった。

ずっと立ちっぱなしだったので、かなり疲れて、どうしたものかと少し考えたが、とにかく人混みから離れようと、ザ・マルからトラファルガー広場の方向へ。帰宅するにしても近くの地下鉄駅はあまりの人の多さに出入りが制限されているらしかった。結局ウォータールー橋でテムズ河を渡り、南岸を散歩することにした。足が疲れているのに歩くというのは、賢明な判断ではなかった。家に着く頃には肉刺ができていて痛かった。そんなことになるなど思わず、ロンドン塔までゆっくり歩いて、帰りは遠回りになるが、最近開業したエリザベス線に乗ってみることにした。なんだか観光客気分。住んでいると何事も当たり前になってしまい、あまり観光はしないもの。

ロンドンの街並みはどんどん変わっている。ウォータールー橋の上からセント・ポール大聖堂や金融街ザ・シティを撮ると⋯⋯

8年前の2014年4月15日、ほぼ同じ地点で撮った写真では高層ビルが少ない。

12年前の2010年5月16日、もう1本上流のハンガーフォード橋から撮影したので、角度が違い更に距離があるが、高層ビルの数はもっと少ない。

改めて写真を比べると、これほど変わっているのに驚く。まるで高層ビルがセント・ポール大聖堂を飲み込むような勢い。独特な形で酢漬け用の小キュウリに形が似ているため『ザ・ガーキン』と呼ばれるビルが、この地点から見えなくなるなんて、2000年代始めの自分には想像がつかなかっただろう。新しい建物が建つと最初の頃は違和感を覚え目障りな存在だが、一度馴染むとあたかもずっとそこに建っているように感じてしまう。取り壊された場合も然り。最初は喪失感があっても、そのうちまるで存在しなかったかのように記憶が薄れる。

反対側のウェストミンスター宮殿を見ると、時計塔の修復工事が終わり、時計がかなり綺麗になった。そしてこちらでも高層ビルの姿が目立つ。

テムズ河南岸をゆっくり散策して、歩道橋のミレニアム橋を渡ってテムズ河北側のセント・ポール大聖堂の方へ。セント・ポール大聖堂は変わらない。そして今後も変わらないはず。

ザ・マルでの喧騒が嘘のようにザ・シティは静かだった。平日は良くも悪くも金と欲望の匂いがするが、休日は人っ子一人いない。

ロンドン橋で再びテムズ河の南側に渡り、タワー・ブリッジまで歩いた。

タワー・ブリッジからザ・シティの方を見る。新しい高層ビルの工事が進んでいる。

タワー・ヒル駅からディストリクト線に乗れば、乗り換えなく帰宅できるのだが、2022年5月24日に開業したエリザベス線に乗るため、反対の方向へサークル線に乗った。2駅目がリヴァプール・ストリート駅。ここでエリザベス線に乗り換えてパディントン駅まで行って、そこで再び乗り換えて家路に。 エリザベス線のホームに立つと、何やら急に21世紀に迷い込んだような気持ちになった。100年前のロンドンの地下鉄路線図を見てもヴィクトリア線(1968年開業)とジュビリー線(1979年開業)がないくらいで、延伸があっても基本的な路線図は現在とはそれほど変わらない。ジュビリー線の延伸区間でホームドアが設置されているが、それ以外のロンドンの地下鉄駅では19世紀後半・20世紀初頭の雰囲気が漂う。

現在エリザベス線は3区間に分かれて運行されているが、そのうち直通するようになる。

深くエスカレーターも長い。天井が高く駅構内も大きいので開放感がある。また天井まで届く密閉式のホームドアが設置されていてる。

パディントン行きの電車は9両編成で、一番後ろの車両に乗った。冷房があって走行音も静かで快適だった。ロンドン地下鉄には冷房がない車両が走っていたり、毎日乗っていたら聴力を損なうだろう大きなレールの軋む音を出す路線があるので、このようなところでも21世紀になったものだと妙に感心する。エリザベス線が開業したことにより、似たように東西を横断し慢性的に混雑しているセントラル線の混雑緩和に繋がるだろう。