#8

5月の詩

毎年5月になると、ヨーロッパでは日が長くなり気温が上がる晩春。朗らかな気分になる。そしてハインリヒ・ハイネの詩を思い出す。

この記事は元々2024年5月14日に投稿したが、2026年4月に始めたサイト・リニューアル作業が2026年5月中に完了すると期待して、少し編集して再掲していたのだが、結局公開は2026年6月になってしまった。

2024年のロンドンは暖冬で始まったが、4月は肌寒い日が続いた。2月が異様に暖かく3月が平年並みだったので、4月を余計に寒く感じたのかもしれない。5月になって一気に暖かくいかにも春らしくなった。日は長く明るく陽は力強く、若葉が茂り花が咲き、鳥の囀りは更に朗らかに動きはますます機敏に。そして春は駆け足で過ぎ去り、もうすぐ夏に。

心地よくなってきた。しかしこの季節になったからと格段浮かれるような歳でもないし、浮いた話もないが、この季節になるとハインリヒ・ハイネの詩を思い出す。

Im wunderschönen Monat Mai,

Als alle Knospen sprangen,

Da ist in meinem Herzen

Die Liebe aufgegangen.

Im wunderschönen Monat Mai,

Als alle Vögel sangen,

Da hab ich ihr gestanden

Mein Sehnen und Verlangen.

詩というものは、詩人が言葉をひとつひとつ選んでリズムや韻などを考えて生まれる。とても翻訳できるものではなく、原語でしか味わえないものだと主張している。少なくとも私に詩を訳す技量も情緒も美意識も備わっていないので、生田春月の訳を借りると

たのしい春がやつて來て

いろんな花がひらくとき

そのときわたしの胸からも

愛のおもひが萠え出した

たのしい春がやつて來て

いろんな小鳥がうたふとき

こひしい人の手をとつて

わたしは燃ゆるおもひをうちあけた

この詩はロベルト・シューマン作品48『詩人の恋 (Dichterliebe)』の第1曲としても知られている。

大学時代、言語を学ぶため、そして史学の一環としていろいろな作品を読んでいた時、ロマン主義は青すぎる甘すぎると思っていたが、中年になって微笑ましく思えるようになった。久しぶりに埃を被っている本を紐解こうか。