サッチャー元首相死去

長い間体調が良くなく、公の場から遠ざかっていたサッチャー元首相の死去が発表された。英国人ならば、誰でもサッチャー氏、そしてサッチャー政権について、何かしらの意見がある。サッチャー氏が辞任に追い込まれた1990年以降に生まれた人もそう。それだけ現代英国で重要な時期だったことを示しているし、サッチャー政権前後を比べれば英国は違う国だということは否めない。ちなみにサッチャー氏が首相に就任した1979年生まれなので、辞任は朧気ながら覚えている。

サッチャー氏の政権そして政策については、様々な見方があるだろうが、サッチャー政権に続いたメージャー・ブレア・ブラウン各政権は、サッチャー氏の政策とその結果とどう向き合うかが焦点だったようにも思える。つまり、根本的な方向転換はなく、サッチャー氏は30年間に渡り、英国の政策議論の主軸を築いたことになる。現在のキャメロン政権は、そのサッチャー氏の政策がもたらしたとも言える危機を乗り越えるために、恐らくサッチャー政権以来初めて、英国を変える政策を断行する必要があるだろうか。

国営企業の民営化や金融制度の大幅自由化などを行い、英国経済を再生させたサッチャー政権の功績は多くの人が認めるところだが、一方で、炭鉱や重工業の衰退を招き、地域によっては産業の構造的な転換はなく、世代を超える失業問題など社会的構造的問題を残した。そのため、いわゆる勝ち組と負け組の間の格差が生まれて、より不公平な社会となったとサッチャリズムを批判する英国人も多い。

今の英国はサッチャー政権の産物。これだけ国の形を変えた民主主義国家の指導者は、そう多くないだろう。特にフォークランド紛争を除けば、平時の首相ということを考慮すれば。これからサッチャー氏について、どのようにして英国の歴史の一部として語られるだろうか。