英国 | テロ容疑者と人権

2009年6月11日

【注】法律や政治の専門家ではないので、この記事には間違った記述があるかもしれないことをここに記す。

連合王国は未だに「旧体制(アンシャン・レジーム)の国」と言う人もいる。まだ一部の世襲議員が残る上院「貴族院」があり、三権が分立していない。上院は立法府であるし、政府の閣僚や大臣もいるので行政権も握る。また上院には直訳すれば法卿(Law Lords)がいて、上院は連合王国内では最高裁判所にあたる。成文憲法がないため、王と議会の上下両院三者一体が国の主権者だという考えが一般的。主権は不可分のため、司法権も事実上主権者である議会の中で行使される。

上院9法卿が裁判官として下した判決は、2005年テロ防止法(Prevention of Terrorism Act 2005)第2条に則り内務大臣が control order でテロ容疑者の自由を制限した際に、大臣が control order を適当と判断した証拠が機密のため、容疑者に渡されず抗告が困難となったことが、1998年人権法(欧州人権条約)第6条「公正な裁判を受ける権利」を害したか否かという点について。裁判官全員一致で、人権法と相容れず、違法という判断に至った。

テロとテロリストはもちろん存在し危険だが、テロを恐れるあまりに、基本的で不可侵であるべき人権が蝕まれ、人間の尊厳を傷つけ、法の支配と適正手続を損なうのは、法治国家からの逸脱を意味するので、判決は妥当だろう。