2010年英国総選挙 | 財政再建への道程

2010年4月30日

これまでの選挙戦で、労働党・保守党・自由民主党3党ともにいかに英国の財政を再建するのか、明かにしていない。どのように歳入を増やし、歳出を削るのか、はっきりと説明していない。「できない」のか、それとも「したくない」のか、どちらにしろ、有権者にとっても市場にとっても不安材料だろう。もちろん有権者は増税よりも減税を好むし、痛みの伴わない財政再建を希望するだろう。しかし英国の現在の経済状況を鑑みれば、悠長なことは言っていられないことを有権者は薄々感じている。そのため、この総選挙がどのような結果となっても、公共サービスの予算カットや公務員削減があり、税金が上がると英国民は半ば諦めている模様。

それなのに、政党は他党の税制政策を批判したり、この分野では予算を削らないと約束したりしている。3党中、おそらくもっとも方向性と柔軟性を示しているのが自由民主党。それでも他党に比べてマシというくらいの程度で、どれだけ財政圧縮が可能か具体性に欠けている。しかしどの税金を上げるのか明らかにしているのは評価に値するだろうか。続くのが保守党。国と官主導ではなく、民の経済成長による財政再建を訴え、できれば増税回避と歳出を減らすことを主張している。特に歳出削減がどれだけ現実的か、疑問視されていて、自由民主党同様に具体性に欠けている。そして現与党の労働党は負けると分かっているのか、教育や保健や警察などの予算を保証するなど、財源の見えない約束を次々と表明している。

労働党と自由民主党は当分の間は国による経済梃入れは必要とし、国民保険料を上げるという増税やむなしの立場で、増税こそ経済成長を損ない、歳出削減に選挙後すぐに取り組むとする保守党と一線を画している。労働党と自由民主党は経済政策では一枚岩かと言えば、そうでもない。例えば子供手当てにあたるような税金控除額を収入によっては撤廃することでは保守党と自由民主党は一致している。労働党は保守党が過去のように大鉈を振るうことによって公共サービスの低下や不平等を増長させるとしていて、保守党は一党過半数による政府でなければ必要な改革を実行できないと主張し、経済は5月6日の投票日まで、最後の争点となりそうだ。