2010年英国総選挙 | 3政党制?

2010年5月3日

木曜日の投票日まで残り数日となった英国の下院選挙戦。未だに保守党政権発足となるか、それともどの政党も半数+1議席に届かない hung parliament となるか、世論調査の結果を見ても分からない。そしてまだ投票先を決めていない無党派層の動向も明らかではない。

現在のところ、支持率では保守党が一歩リードしていて、労働党と自由民主党への支持がほぼ拮抗している。もしこのままで投票となったら、保守党が議会最大会派となるが、過半数に至るかは微妙な状態。票数では自由民主党に劣るかもしれない労働党は議席数では第2会派になる。

単純小選挙区制は2大政党制なら良い制度だが、多数政党制には向かない。選挙区で1位となれば、どれだけ低い得票率でも議席獲得となり、選挙区で過半数の有権者から支持されていない候補が議員として選出される場合が多い。前回の2005年総選挙では、労働党はおよそ36.2%の得票率で約55%の議席を獲得している。そのため、いくら自由民主党の全国的支持率が上昇しても、多くの選挙区では労働党あるいは保守党に次いで2位となり、議席獲得とはならない。

そして単純小選挙区のもう一つの弊害とも言えるのが tactical voting と呼ばれる「戦術投票」だ。つまりある政党を積極的に支持するのではなく、ある政党が選ばれることを阻むために、勝機ある支持政党とは違う政党に投票することを指す。保守党支持ではなく反労働党、あるいは労働党支持ではなく反保守党ということ。

多くの選挙区はよほどのことがない限り、労働党か保守党が盤石。このような選挙区を safe seat と呼ぶ。そのため、今後英国の行方を左右し、熾烈な選挙戦が行われるのは、650議席中200議席ほどの swing seats。日本でもよく一票の格差が問題となっているが、このような制度だと、選挙区に住む有権者の数によって生まれる一票の格差というより、safe seat の有権者の一票より swing seat の有権者の一票の方が政党によって重要という格差が存在する。

保守党も強固な地盤となっているイングランド南東部や農村部以外となると苦戦気味の所も多い。もし保守党が単独過半数を目指すなら現有議席に116議席獲得が必要となるので、多くの swing seats を獲得しなければならない。労働党が強い都市部でどれだけ支持を増やしているのか、不透明なところもある。

しかしこのままで5月6日となり、労働党と保守党合わせても全国の得票率が60〜65%ほど、つまり35〜40%ほどの有権者が保守党も労働党も支持せず、自由民主党の得票率が労働党を上回れば、選挙制度改革は不可避となるだろう。そして3党制あるいは多数政党制にどのように移行するのか、注目されるだろう。