英国社会 | パブの凋落

ロンドンのパブの写真

英国のどんな辺鄙な小さな町にも必ずあるものとして、「教会、郵便局、そしてパブ」と言われていた時代があった。しかし、ここ数年、郵便局は採算がとれず閉店し、パブも次々と潰れている。教会も牧師が数教区を兼任するようになってきた。The Times 紙によると、現在の不況下、1週間あたり52軒のパブが廃業しているらしい。

不況のため可処分所得が減り、客は少なくなり、まだ来店する客も飲む量を減らしている。確かにパブで飲むより、家で飲んだ方が安い。不況で内食あるいは宅配が増えてきたという。「おとり商品」として酒を売るスーパーで多く、パブは必要経費がかかるので、値段だけではとても太刀打ちできない。英国人の中には、ぐでんぐでんに酔っぱらうことが「酒を飲む楽しみ」と思っている連中がいて、とにかく量を飲むことが主眼となり、値段はこのような消費者にとって重要。

ただパブ産業は不況が始まる前からいろいろと問題を抱えていた。大袈裟だが、英国社会の変遷という潮流にパブ産業は乗れず、現在の不況はただその傾向が強まっただけとも言える。

例えば、外食産業の多様化。未だに物凄く不味く篦棒に高い自称「レストラン」もあるが、それでも近年、英国の食事情はかなり改善された。一昔前の英国では「飲」と「食」が区別されていて、パブは「飲む」だけの場所だったが、不況風が吹く前のここ数年は外食する英国人が増えていたため、食事とともにアルコールを飲むようになった。そのため、パブでも食事を出すようになった。結果として、伝統的なパブとレストランの中間の「ガストロパブ」が増えた。これでパブがパブではなくなったという人もいる。

禁煙法も客足が遠のく理由。パブと言うと酒と煙草と体臭のにおいが漂う場所だったが、禁煙法施行後は酒と体臭のみとなった。煙草を吸いたい人は外に出なければならず、特に冬は寒いので、面倒がる。煙草を吸わない身としてはありがたいが、喫煙者にとってパブは居心地が悪くなったことは違いない。

そしてパブが社交の場でなくなってきたこともある。これは町の共同体意識が薄れたことに起因する。パブに行けばかならず常連がいて、他愛のない会話ができるような雰囲気が今はなくなりつつある。社会的な役割がなければ、ただの飲食の場となってしまい、他の外食の場との競争に曝され、質と値段が勝負所となる。

これからもパブは厳しい経営状態が続くだろう。