英国:暴動沈静化?

2011年8月10日 | 現地時間23:45

ロンドンからイングランドの多くの都市に広がった暴動・略奪だったが、今晩は現在のところ大きな問題は発生していない模様。ロンドン・マンチェスター・バーミンガム・リヴァプール・ノッティンガムなど各都市には多数の警察官が繁華街や商店街に配置されていることが功を奏しているらしく、またイングランド中部・北部では強い雨が降っているのも理由としてあげられている。もし今夜大規模暴動や略奪が発生しなければ、ようやく事態は沈静化へと向かうだろうか。

ただ様々な場所で緊張が続き、これから更に問題に発展しかねない要素がいくつもあるのも事実。例えば今日午前1時頃、バーミンガムで地域を暴動から守ろうとしていた自警団の青年3人が、暴走し突っ込んできた車に轢かれ死亡した。他の地域でも自警団が結成されているが、正当防衛の線引きが曖昧だったり、暴力の連鎖を生む可能性があったり、危険性が伴う。また自警団の中には極右団体が中心になっているのもあるので、略奪を主な目的とする暴動が続けば、略奪者を特定の人種と結びつけ、人種暴動に飛び火しかねない。そして人種暴動は必ずしも白人・非白人という対立軸ではなく、上記バーミンガムの例だと死者が出た主にパキスタンやバングラデシュ出身者とその子孫のイスラム教徒のアジア人対運転手の黒人という構図となりうる。ただこの場合は、死亡した青年の父親が自制と人種と宗教を超えた団結を呼びかける声明を発表して、事態は収束。ちなみに英国英語でアジア人(Asian)というとインド亜大陸からの移民とその子孫を指し、多くの場合英国国籍保有者でもある。英国は人種の坩堝という面があり、人種や民族の対立が発生すると、非常に複雑で危険となるので、そのようなことは避けなければならない状態と言えるだろう。

2日前の夜、略奪が発生したクラッパム・ジャンクション。まだ閉まっている店も多く、いつ再び開店できるのか不透明なところが多そう。改めていかにひどい被害だったかが分かる。

昨日、昼過ぎにシャッターを降ろした店が多かったウィンブルドン。一方今日午後3時頃、店は全て営業していて、通常の様子だった。問題はこれまで起きていないが、ガラスが割られて略奪されるのを防ぐため、板でくまなく店先を覆っているところが数軒あった。

今夜暴動や略奪が起きなかったとしても、ロンドンに体感治安が戻るまでまだ数日かかりそうだ。