英国:アルコールに起因する死亡者数(2011年)

英国でよく見かける光景に、週末に泥酔する人々が挙げられる。ぐい呑みで、短時間に大量のアルコール飲料を飲むことを binge drinking と英語で表現する。この binge drinking は西欧では英国特有の現象だと言われている。社会的に飲み過ぎは問題だと認知はされているものの、たまには羽目を外してもよいじゃないかと、容認されている部分がある。ヨーロッパの他国では、一般的に泥酔状態で街の中を徘徊するのはみっともないことで、社会的に容認されていない。金曜日あるいは土曜日の夜遅く、ロンドンの繁華街を歩くと、千鳥足どころではない、酷い酔っぱらいがたくさんいる。中には喧嘩して、警察のお世話になる青年の酔っぱらいも。パブやバーで飲まなくても、家庭で飲む人も多い。

2013年1月29日、英国の統計局は、イングランドとウェールズにおける2011年にアルコールに起因する死者に関する統計を発表した。これはアルコール中毒と胆汁性を除く肝硬変など慢性肝疾患による全死亡者数。慢性肝疾患の場合、死亡診断書にアルコールについての関連性に記述がなくても、この統計の一部となっている。また、アルコールが原因ともなりうる他の生活習慣病、または癌、あるいは飲酒運転による交通事故によって死亡した例は対象外となっている。そのため、この統計に含まれる死者の66%がアルコール性肝障害によるものとなっている。

この統計によると、2011年アルコールに起因する死者数は8748人で、前年2010年より42人少ない数値となった。人口10万人あたり12.6人が、アルコールが直接的な原因となって死亡したことになっている。性別では、男性が66%を占めていて、年齢でみると、55〜59歳の死亡率が一番高い。そのため、死亡率が一番高いグループは、55〜59歳の男性で、人口10万人あたり46.9人となっている。これは生活習慣病の側面があって、長期の飲酒が原因となるアルコール性肝障害が死因であるためだろう。

そして地域差もある。男性では、死亡率が一番高いイングランド北西部では人口10万人あたり22.9人と、人口10万人あたり11.8人で一番低いイングランド東部の約2倍となっている。女性も男性同様にイングランド北西部の死亡率が人口10万人あたり10.8人と、人口10万人あたり5.3人と一番低いロンドンの約2倍となっている。一般的にイングランド北西部に続き、イングランド北東部での死亡率が高い。ちなみにウェールズでは死亡率が下がっているという。

過度の飲酒は生活習慣病の原因となったり、臓器に悪影響を及ぼすだろうから、アルコールが間接的な死因となっている場合が多いはず。これからアルコールとどう向き合うか、英国では議論が続きそうだ。