W杯2014年ブラジル大会

ワールド・カップ観戦日記 | 2 | 大会2日目

メキシコ対カメルーン;スペイン対オランダ;チリ対オーストラリア

数日遅れだが、大会2日目の3試合についての感想を書いてみる。

メキシコ1:0カメルーン

さて、開幕試合とこの試合を終えて、専ら話題となっているのが、審判、そして誤審である。審判というのは、非常に難しい仕事で、話題になるのは、大抵良くないこと。昨日のブラジル対クロアチアの試合での、試合の転換点となったペナルティーは、PKに値する反則ではなかっただろう。もし、あれでペナルティーとなるのであれば、多くの試合でPKがあるはず。そして、この試合の前半、メキシコの Dos Santos 選手は2回ゴールを決めたが、両方共にオフサイド判定。ペナルティーの場合は、審判の判断によるところがあるが、オフサイドは正しいか間違っているかのどちらかである。ビデオ判定などが導入されない限り、人間が目で見て即座に判断する制度であり、誤りがあるのは当然のことだが、何回も続けば、不幸であり、不公平である。もしメキシコがこの試合に負けていたならば、大問題に発展していただろう。

メキシコは見た目にはかなり速いペース、そして運動量が豊富で押すチームだが、どこか決定力に不足しているようなチームに思えてしまう。もっともこの試合では3ゴール決めたのだが。一方のカメルーンはどうもちぐはぐしていて、特に守備の組織に問題があった。ブラジルとクロアチアと同組なので、この2チームにとって、16強進出は難しいかもしれない。

スペイン1:5オランダ

スペインの完敗、それともオランダの完勝と呼ぶべきだろうか、オランダがオランダらしいサッカーに回帰して勝ったのは、観ていて興奮した。オランダには、このようなサッカーで、勝って欲しいと思う。これまで素晴らしい選手を数多く輩出してきたオランダだが、前回のW杯ではゲームを潰す作戦に徹して、観ている側からすると、辟易していたが、今大会ではこのいかにもオランダらしいサッカーを貫いて欲しい。

前半だけで見ると、1:1で、どちらかと言うと、スペイン有利に見えた。ストライカーの Diego Costa 選手を起用し、前へのパスが速くなり、縦の動きが、以前よりも素早くなっていたし、攻撃の要となる中盤の Xavi, Iniesta, Silva 各選手のパスの精度は凄かった。それでも後半のオランダの怒涛の攻撃の予兆はあった。試合序盤に Sneijder 選手がGK Casiilas 選手と1対1になった場面。スペインのサッカーは不変である。ボールを長い間支配して、隙を探し、空間を作り、好機を見出す。ボールを奪われたら、高い位置で奪い返す。相手チームの選手にパスを出す時間も空間を与えない。しかし、その分、素早く、長いパスを送られると、スペインは苦戦することもある。2012年欧州選手権でグループ・ステージでのイタリアとの引き分け、そして2013年のコンフェデレーションズ・カップでのブラジルでの負けのように。オランダは Van Persie, Robben, Sneijder というスピードあり、守備を躱す、決定力のある3選手が揃っていて、前へのパスさえ送ることができれば、一撃を加えることができる。スペインはPKで先制し、前半終了に近い時点に Silva 選手に決定機が訪れたが、GKに阻まれた。その直後、オランダは Van Persie 選手の素晴らしいヘッダーで同点とした。

後半は一方的にオランダが攻める展開となった。スペインの左右守備選手は前へ出るので、どうしても球を奪われたら、手薄となってしまう。そしてスペインは幅をあまり利用しない。左右大きく横に変えることはあまりない。上記通りオランダの前線には、攻撃力に富む選手が揃っている。2012年欧州選手権で、オランダは守備・中盤・攻撃のバランスを欠いていたが、この試合では中盤を厚くして、スペインにあまり場所を与えず、球を得たなら長いパスを前に送った。受け取り、1対1となれば、例えば Robben 選手を止めるのは非常に難しい。オランダの最初の2点をアシストした Blind 選手のパスは寸分違わずと言ったところ。オランダの3点目はFKから、4点目はスペインGK Casillas 選手のミスを Van Persie 選手が逃さず、5点目はまたしても Robben 選手が長いボールを受け取り前に進み、守備を躱しゴールを決めた。圧巻だった。

この一試合でスペインの黄金時代の終焉とするべきか、いろいろと議論されるだろう。この2チームの対照的なサッカー、両方共に好きだ。緻密で、相手を追い詰める、理知的なサッカーのスペイン。そして豪快で、スピードがあり、個人の決定力に富むサッカーのオランダ。前回の決勝がこのようであれば良かったのに、と思ってしまう。上にあるように、スペインのサッカーは、前半ではよく機能していたと思うし、前よりも良くなったように見えた。もし前半だけで試合が終わっていたならば、引き分けだがスペインに分があった。守れば守りに入るほどスペインの思う壺だろう。スペインに対抗するには、速さで開いた空間を利用すること。リスクは伴うが、勝ちを求め、カウンターで積極的に前へ出る必要があるだろう。

スペイン奮起となるか、オランダはこの素晴らしいサッカーを維持できるか、次の試合に期待した。

チリ3:1オーストラリア

この日の第3試合はチリとオーストラリアの対決。チリは攻撃的サッカーで、観ていて面白いうという前評判で、16強進出すれば、南米開催ということもあり、今大会の穴馬とも言われている。ただ、スペインとオランダと同組になってしまったのは、不運と言えるだろうか。オーストラリアはこのグループ最弱で、前半の15分までにチリが2点を決めて、このままでは、大差の勝敗になるのでは、という危惧というか期待があったが、オーストラリアは持ち直し、前半20分以降は結構良い試合で、35分には1点を返した。後半はどちらかと言うとオーストラリアの方が元気があったようにも見えた。90+2分にチリの3点目が決まり、結果は3対1と2点差だったが、内容を見れば、オーストラリアはチリほぼ互角だったように思う。オーストラリアは米国同様、運動量が落ちないとにかく押すチームで、そのペースと試合の流れに相手が呑まれると、好機が訪れる。このようなチームを相手とする場合、時として必要とされるのは、試合運びを落ち着かせること。つまり試合の主導権を握ることで、それが巧くできるチームがやはり一番強いと思う。