Oasis, Blur, Spice Girls

10代の頃に聴いていた音楽、傾聴していなくても流れていた音楽というのは、何年経っても覚えているもので、その時代の他の記憶と繋がっている。1979年生まれなので、1990年代が私の10代と重なる。現在ほどメディアが多様化していなかった時代、テレビやラジオそして店内のBGMで流行曲が流れていて、逃れることはできなかった。音楽を買って再生して楽しむための記録媒体と言えばCDだが、流れてきた曲を録音して再生するにはカセット・テープを使っていた時代。そう考えるとここ20年ほどの技術の進歩は凄い。

一番音楽に多感なのが10代半ばとすれば、私の場合は1990年代中葉がそれにあたり、英国ではいわゆるブリットポップ (Britpop) の最盛期。また以前記事にしたこともあるが、日本では小室哲哉氏の時代にあたる。英国のどこでも OasisBlur が流れていたと記憶している。学校でも Oasis 派と Blur 派があった。記憶に自信はないが、確か全体的に見て Oasis 派の方が優勢だったし、特に女子生徒の間で人気が高かった。一方少し背伸びして大人ぶりたい男子生徒は Blur 派だったような。いつの時代にもいるだろうが、格好良いというものを否定するのが格好良いということだったのかもしれない。

曲と外見の正統派の格好良さなら Oasis だろう。一番印象に残っていて、今でも英国の嫌らしい寒い雨の日の夜に時たま聴きたくなるのが、べたかもしれないが1995年にリリースされた OasisWonderwall (music.youtube.com/watch?v=ZrOKjDZOtkA) という曲。人が音楽に対して抱く感情や思い出は個々で違うが、この曲は何か1990年代をよく表現しているように思う。もちろん振り返るとより強調されるが、1992年の総選挙で保守党が多くの予想に反して勝利し、その直後にポンド危機が訪れた。景気が悪くなった。子供だったので政治や経済のことは分からなかったし、経済もようやく回復している時期だったが、1995年になっても英国にはある種の停滞感や窒息感が漂っていたことは何となく感じていた。あるのは曲がりくねった道のみで、来るかもしれないと期待していた救いの手も現れなかった⋯⋯。

おじさんおばさんと呼ばれるような歳になれば、数年の差なんて無いに等しいが、10代だと1学年の差で世界が違うので、流行っているものも全く別なことが多い。そのため1996年にリリースされた Spice GirlsWannabe (music.youtube.com/watch?v=tscL_I2v7pU) が大流行したことは覚えているが、恐らく数年若い人たちにどんぴしゃだった。ブリットポップというよりもクール・ブリタニア (Cool Britannia) にあたる。曲は前向きで楽観的。享楽的でもあろうか。1996年のサッカー欧州選手権はイングランドで開催されて盛り上がった。翌1997年にはトニー・ブレア党首率いる労働党が大勝して、政治もがらりと変わった。無論人によって見方は違うだろうが、1997年〜2001年は私が知っている英国で一番気楽というか社会全体に楽観と余裕があった時代のような気がする。

他にも多くのバンドや歌手がいたし、懐かしがって調べはじめたらきりがないが、数ヶ月前同年代の友人と昔話をしていたら、やはり OasisBlur の名が真っ先に挙がった。今は何が流行っているのか全くと言ってよいほど知らない。つまらないおじさんになってしまった。