2022年男子サッカーW杯・雑感・1

英国時間で2022年11月25日に行われたオランダ対エクアドルの試合をコンピューターのディスプレイに無音で写しながらこの記事を書きはじめたが、用事があったり思いついたことがあったり、考えが纏まらず削除したり、結局脱稿は2022年11月27日のクロアチア対カナダの試合後になってしまった。タイトルにあるように雑感で、長くまとまりのない感想の羅列になる。本当に一人のおじさんのくだらない独り言。明日で2巡目の試合が終わるが、2試合を観ただけで、チームの良し悪しは判断できない。初戦で大敗を喫したイランが2戦目でウェールズに勝ち、大勝したイングランドは米国に対して劣勢で引き分けに終わったのだから。日本はドイツに勝ったがコスタリカに負けた。しかしトーナメント方式だと大きく躓くことは許されない。2戦2勝で16強入りを確実にした代表があれば、2戦2敗でグループ・ステージで敗退が決まった代表も。

W杯がカタールで行われるべきか否かという議論では、開催地として不適切だったことは間違いない。ただし最近のW杯や五輪を見れば、カタールだけではない。人権侵害などの観点から、ロシア(2018年W杯)や中国(2022年北京冬季五輪)で世界的スポーツ大会が行われたのは良くなかったと思う。政治とスポーツは切り離して考えるべきだという意見があり、分からなくもないが、非民主的な独裁国家はこのような大会を利用して国内外に体制の正統性を示したり良い印象を与えようとする。最近よくみかける英単語の sportswashing にあたる。これだけ問題視されたので、今後はFIFAにしろIOCにしろ、開催国の政治体制もリスクの一因と捉えるようになるだろう。世論に配慮するというよりも、スポンサーの意向が重要になってくる。何事も金次第。

人権問題や政治体制以外にもカタール開催は失敗に終わるかもしれない。多くの試合で空席が目立つ。最近のスポーツ大会では「遺産」が重要視される。単なる一過性のお祭り騒ぎや箱物を造ることだけではなく、開催することによってスポーツ文化を根付かせることを目的とする。私が子供の頃、日本でスポーツとして大々的にテレビや新聞で報道されていたのは野球と相撲だった。サッカーがプロのスポーツつまり興行として成り立つほどまでに日本で根付いたのはここ30年ほど。2002年のW杯日韓共同開催はこの流れの中で重要だった。今年蒔かれた種が大木になるかどうかは、それこそ20年30年という期間で捉えないといけないので、すぐに失敗と断ずることはできないが、カタールにてサッカーの裾野が広がるだろうか。

サッカーのW杯や欧州選手権そして五輪はテレビでよく観るほうだが、流石に1〜2巡目に1日4試合は多い。以前は1〜2巡目は3試合、3巡目に2試合同時開始で2組分4試合だった。英国だと地上波(BBCとITV)で放映されている。テレビはないので、最初に書いたようにコンピューターのディスプレイで観ている。前回のW杯と欧州選手権で、BBCが放送する試合では tactical camera が選べて、専らそれを観ていたが、今回は残念ながらない模様。普通のテレビは頻繁にカメラを切り替えて、主にボールを追いかけるが、この tactical camera だと定点ではないが、ほぼピッチ全体が見渡せた。なお英国のテレビの良いところは実況が落ち着いているところ。

サッカー観戦の楽しみ方は人それぞれだが、私が好きなのは、選手たちがボールを持っていない時にどのような動きをしているかを観察すること。それができた tactical camera は本当に良かった。大袈裟かつ雑な言い方をすれば、サッカーは時間と空間をいかにして作って球をゴールに入れるか、そしてどのように相手に時間と空間の隙を与えないかを競うゲーム。22人が参加するがボールは1球。ボールを持っていない選手の動きが重要で、チームメイトと連動しなければならない。パス1本で相手チームの選手を一気に何名も無力化することができる。そんな上手なパスを観るのが一番興味深い。パスを出す選手と動いてパスを受け取る選手。時には囮で動いてパスを可能にする選手。

流れを観るのが楽しみなので、サッカーの場合、ハイライト動画にあまり興味がなく、観るなら試合開始から終了まで通しで観ることが多い。W杯などではさすがに全試合を観ることはできないので、ハイライトを観たり記事を読んだりする。競技なので結果を最優先するのはもちろん分かるが、サッカーは試合内容と結果が乖離することが多い。どれだけ優勢な試合運びでもゴールを決めることができなければ、相手の良い動きで点を取られて負ける。これまでの試合であればベルギーが1:0でカナダを下し、ポーランドが2:0でサウジアラビアに勝ったのが良い例だろうか。コスタリカに0:1で負けた日本もその中に入るだろうか。サッカーにあまり興味がない友人はその不条理さが納得できないらしい。トーナメント方式であれば、守備力とカウンターと運で勝ち上がるには限界がある。いつかはゴールを決めることのできるチームと対戦する。でも優勝は不可能ではない。2004年欧州選手権優勝国ギリシャが好例。逆に2008〜2012年の期間に欧州選手権連覇とW杯優勝を果たしたスペインは試合内容と結果が合致していた。

国や組織そして個々の人生においても「黄金期」が存在する。チーム・スポーツであれば適材適所というか優秀な選手が揃った状態で、成功失敗が五分五分の場面でも多くが上手くいく運も味方する時期。上記のスペインが一番最近の例だろうか。黄金期とは恐らく絶頂の時期が過ぎて、振り返ることで初めて分かるもの。寄る年波には勝てぬというか、主要選手が引退したり最盛期を過ぎたりしている代表もある。変な表現になるかもしれないが、個々そしてチームとしてキレがなく、何事も鈍い。今大会ではベルギーやウルグアイやウェールズやクロアチアがそんなチームのような気がする。個人的にクロアチアのサッカーが好きなので、昨年の欧州選手権を観て、厳しいかもしれないと思っていて、初戦でモロッコに苦戦したので、カナダに勝ったのは嬉しい。強い中盤が健在だ。

年齢的に今回のW杯が恐らく最後の大きな国際大会になる注目選手も多い。ここ十数年世界的スーパースターのアルゼンチン Lionel Messi 選手とポルトガル Cristiano Ronaldo 選手が最たる例だろうか。ブラジルの Thiago Silva 選手も今回が最後の大会になるだろうか。一部では Neymar 選手にとって最後のW杯の機会などとも囁かれている。すでに書いたが、クロアチアは好きなチームの一つで、中心的役割を果たしてきた Luka Modrić 選手にとって最後のW杯になるだろうから、活躍する姿を見たい。

日本はドイツに勝ったのは運も味方をしたが、もし大会中全てのチームに均等に一定の運の量があるとすれば、全てを使い果たしたのかもしれない。違う日なら大差でドイツに負けていただろう。それにしても日本の2点目には驚いた。FKからのロング・ボールでゴールを決められてしまったドイツの守備の杜撰さと、きちんと決めることができた浅野拓磨選手に。日本代表の長年の課題は決定力不足と言われてきた。9番の存在感ある点取り屋がいない。でも以前と比べると決定機が十分あれば決められる選手が増えてきたと思う。コスタリカに負けたのは不運と言えるかもしれないが、決定力不足というよりも決定機に至るまでのラスト・パスあるいはその1本前のパスの遅さと鈍さと雑さ、中盤での縦の動きと連携の欠如、一辺倒な攻め方、負けたのでいろいろと批判されるだろう。英国時間今晩のドイツ対スペインの結果によって、日本が16強に進出するにはスペインに勝たなければならない状況になるかもしれない。もしスペインがドイツに勝てば、どう考えてもゴール差で事実上グループ・ステージ1位通過となるので、過密スケジュールを考慮して主力選手を休ませて控え選手中心で日本との試合に臨むかもしれないが、取らぬ狸の皮算用だし、スペインの選手層を考えれば控え選手中心のチームも恐ろしく強い。コスタリカに負けたことで日本は千載一遇の機会を逸した。それがW杯の怖さであり、醍醐味とする人もいるだろう。

色々と思いつくが、この記事はこの辺にしておこう。