旅の思い出

チャイナタウン・バス

もう十数年前のことになるが、ニューヨークとボストンの間を安いチャイナタウン・バスを使って往復した。写真にあるのはその時の乗車券。最近いろいろと片付けていたら出てきた。表には15ドルという運賃や注意事項などが書かれていて、裏には時刻表が印刷されていた。

当時、このバス券はインターネットで買うようなものではなく、通りに面した小屋で現金購入した覚えがある。ニューヨークでは中華街のキャナル・ストリートが乗降場所で、ボストンではサウス・ステーション・バス・ターミナルに乗り入れていて、5時間ほどかかったと記憶している。

こちらは記憶違いかもしれないが⋯⋯途中でトイレ休憩も兼ねて、往路と復路、どちらか一方では中華料理店、もう一方ではマクドナルドに停まった。これはきっと中華料理店からはマージンを取っているだろうと邪推したもの。中華料理にしろマクドナルドにしろ結構匂いの強い食べ物。バス自体はあまり印象に残っていない。特に素晴らしかったわけでもなかったが、酷くもなかった。

ここ10年ほどだろうか、日米欧ですっかり廃れた感のあった長距離都市間バスが、主に安さを売りに人気を博している。ここ数年は座席が広くなったり、乗り心地が良くなったり、無料のインターネットがあったりと、ただ安いだけではなく、サービスも良くなっている。

日本やヨーロッパの高速鉄道網に慣れていると、ボストン〜ワシントンDCは人口密度が高い地域が続き需要もあるだろうから、整備すれば鉄道が主要な交通手段になると思うのだが、電車はアセラ・エクスプレス (Acela Express) という名前のわりにはあまり速くない。ニューヨーク〜ボストンの鉄道は約370キロメートルの距離。現在最速で3時間30分を超える。単純に距離で比較すると、東海道新幹線だと東京と名古屋の次駅岐阜羽島の間が約367キロメートル、東北新幹線だと東京と仙台の次駅古川の間が約364キロメートル。岐阜羽島も古川も停車するのは最速の新幹線ではないが、それでも3時間を大きく下回る。

次にもしニューヨーク〜ボストンを移動するとなれば、手段は搭乗時間の短い飛行機になるだろうか、高くてあまり速くないが寛げる鉄道になるだろうか、それともまた安さが決め手のバスになるだろうか。