短評 | Philip II

2009年9月5日

スペインのフェリペ2世は40年以上も国王として君臨した、ヨーロッパ近世を代表する君主の一人。フェリペ2世が治めたスペインは世界的な大帝国で、他のヨーロッパの人々から恐れられたが、イングランドへ送った「無敵艦隊」は失敗に終わり、父カール5世から委ねられたネーデルラントも失うという、後半は失意に終わった治世でもあった。そのためか、例えば同時期のイングランド女王エリザベス1世のような評判を得ることはなかった。

フェリペ2世の評判は、他の歴史上の人物同様に差がある。大帝国を擁し、影響力があったフェリペ2世のことだから、極端な意見があってもおかしくない。即断力には欠けるが、勤勉で長時間働き続けた宗教心強い王という見方があれば、武力と金の力を利用し他国を圧迫し、暗殺も厭わなかった、偏見に凝り固まった暴君という正反対の観点もある。

最初にこの本は、カール5世とフェリペ2世の父子関係を中心に話を進め、フェリペ2世が受け継いだ領土(スペインとネーデルラント)について説明がある。フェリペ2世の治世前半はレパントの海戦のような勝利もあり、内政・外交ともに王として思慮深いところを見せた。しかし、南アメリカ大陸からの銀が大量に流入してくることによって、金銭的な余裕が出たこともあり、大胆な外交政策を続け妥協をしなかったため、国は疲弊し領土を失ったと締めくくる。

読み易く250ページ程なので、学部生向き。内容もよく選ばれているので、フェリペ2世の人と治世を知るには格好の本。