短評 | The Nature of the Early Ottoman State

2010年5月21日

オスマン帝国の興隆の原動力は一体何であったのか?

学界で主流だったのは、オスマン帝国の底流には ghazā つまりイスラム布教・聖戦思想という考え。著者はこの意見に反対する立場。本の前半は史料研究で、これまでイスラム布教が根本にあったという主張の基づけとなった碑文などの研究について、偏った見方をしていたと論じている。

オスマン帝国がイスラム化したのは、コンスタンティノープル制服後。そしてアラビア半島を制覇したのち、イスラム化は加速するが、この本はそれ以前のオスマン帝国の成り立ちの過程を辿っている。著者によれば、オスマン帝国の主力はキリスト教徒、キリスト教徒からのイスラム教に改宗した者たちだった。そして一小領土からまず海を渡りバルカン半島で版図を広げた原動力は勝ったさいに得られる戦利品や領土にあったという。イスラム教徒であることは、この時点ではさして重要ではなかったし、イスラム布教が国是であったわけでもなかった。