Athletic Club 2 | 1 Manchester United

2012年3月15日

スペインのサッカーの層の厚さを物語るような試合だった。この試合は、現在、イングランドのプレミア・リーグ1位のチームで、チャンピオンズ・リーグのグループ・ステージで敗れ去りヨーロッパ・リーグに回ったマンチェスター・ユナイテッド、そしてスペインのプリメーラ・デビシオン7位のアスレティック・クラブ(ビルバオ)の間のヨーロッパ・リーグ16強の第2戦で、先週マンチェスターで行われた試合では、アスレティック・クラブが3:2で勝利した。このため、マンチェスター・ユナイテッドが、この試合90分以内で勝つには、2:0で勝つ、もしアスレティック・クラブが1点取れば、3点を決めなければならない。これは、同点の場合は、アウェイ・ゴールを多く決めたチームが勝つという規定があるため。なお、90分を終わってマンチェスター・ユナイテッドが3:2とリードしている場合は、30分の延長となり、延長時間に得点がなければ、PK戦となる。

先週のマンチェスターでの試合の一部をテレビで観戦したが、アスレティック・クラブの運動量には驚いた。なにせ、マンチェスター・ユナイテッドの選手が球を持てば、時間の余裕を全くと言ってよいほど与えずに、アスレティック・クラブの選手が球を奪おうとする。このプレスディフェンスをほぼ全員行なっていた。一旦球を奪えば、素早く攻撃に移る、それも多くの選手が前に出て。かなり体力を消耗し、下手すればプレスディフェンスのため、相手に空間を与え、得点機を与えてしまう可能性がある作戦。しかし、息をつかせぬ攻撃で、アスレティック・クラブが勝利した。この試合、もしゴールキーパーの De Gea 選手の活躍がなかったならば、もっと点差があっただろうと報道されていた。

今日の展開はどうだろうかと期待しながら観たら、上記と同じで、とにかくアスレティック・クラブの各選手の体力と持続力と技術そして戦術眼には脱帽したし感動した。どうしてもゴールを決めなければならないマンチェスター・ユナイテッドが押すかとも思えたが、驚愕するような運動量で、ほぼ試合を通して、アスレティック・クラブが攻める展開となった。しかし、プレスディフェンスだけではなく、攻撃も鋭く鮮やかだった。それもカウンターだけではない。パス回しは巧く速く適確、そして各選手が定位置に縛られることなく、状況に合わせて、入れ替わりながら、マンチェスター・ユナイテッドを翻弄した。つまりただ体力や運動量によって勝ち取ったものではなく、アスレティック・クラブ全選手が、己の動きが次の次にどのように繋がるのか、しっかりと分かりながら動いているようだった。

この試合では3ゴールあった。本当はもっとゴールがあってもおかしくなかった。決定機と呼べるような機会が、アスレティック・クラブには他にも何回もあったのだが、決めることができなかった。ゴールはいずれも印象深いものだったが、アスレティック・クラブの1点目とマンチェスター・ユナイテッドのゴールが特に素晴らしかった。まず、23分の Llorente 選手のゴール。立役者となったのは、自陣左側から長い長いパスを放った Aurtenetxe 選手だった。まず Llorente 選手がマンチェスター・ユナイテッドの守備選手からやや離れて、右に移り、空間を作り出したあとに、頭上を超えるパスが届き、素晴らしいボレーでシュート、ゴールが決まった。あれほどのパス、そしてあれほどのボレー・シュートは何度見ても飽きないだろう。65分、アスレティック・クラブの2点目は、右側からの攻撃が奏して決まった。もはや、マンチェスター・ユナイテッドには反撃の力も意志もないかと見えたが、やはり Rooney 選手はさすが。ボックス外から右足で力強く放ったシュートは綺麗にゴールに収まった。しかし、これはまさに個人芸であって、マンチェスター・ユナイテッドはチームとして攻撃のリズムを掴むことができなかった。

この対戦は2戦あったが、アスレティック・クラブの完勝と呼んで差し支えないだろう。もちろんこの試合、そして先週のマンチェスターにおける試合だけで、この2チームを比較したり、イングランドとスペインの2リーグを比較したりするのは、禁物だろうが、アスレティック・クラブには個々の才能を超えたチームとしての強さが光ったし、このアスレティック・クラブがリーグ7位というのは、スペインのリーグ・サッカーをあまり観ない人としては驚きだった。