中東情勢

シリア内戦とクルディスタン

エジプトの緊迫した情勢のためか、あるいは外にあまり情報が伝わらないせいか、それとも西側諸国が手をこまねいで内戦の終わりを待っているせいか、シリアは英国でもっとニュースになるべきなのに、なっていないように思う。西側諸国が対応策に苦慮しているうちに、シリアの内戦は刻々と複雑となり、流血はとどまるところを知らず、多くの難民が生まれている。内戦が始まってから、もう数年となっている。

2013年7月28日、ロンドンのホワイトホールにて行われていた、自由シリア軍への武器供与に反対する集会

数週間前の2013年7月28日のことになるが、シリアから遠く離れた英国・ロンドンの官庁街であるホワイトホールで、写真にあるような小さなデモがあった。これは、クルド人のデモで、シリアの反政府勢力に武器を供与しないよう求めていた。右の幕によれば、自由シリア軍は、狂信的な聖戦主義者で、クルド人を殺害していて、道路を封鎖し、民間人を誘拐しているという。もう一方の幕も、食料もなく、医薬品もなく、安全もないと、クルド人の窮状を訴えている。ちなみに、赤・白・緑の水平三色で中央に太陽がある旗は、クルドの旗。

アサド政権派、そして反政府勢力もそれぞれ化学兵器の使用が取り沙汰されているし、民間人や捕虜に対して残忍な行為を行なっていることが報道されている。また反政府勢力も一枚岩ではなく、アサド政権打倒を共通の目的としているが、その後のシリアを例えば厳格なイスラム主義国家とするのか、それとも世俗的な民主主義国家とするのか、いろいろな立場や目的があるし、極めて地域的な対立に起因する仲間割れや同士討ちもあるらしい。

多くの民族と宗教宗派が共存していたシリアが、内戦状態となり、人々の間にある溝が深まっているのであろうか。いつかは終わる内戦後、多民族・他宗教・他宗派が共存できうるシリアが誕生するだろうか。内戦が長引くほど、その可能性は遠のくように思われる。そして、内戦が長引くほど、事態は複雑となり、近隣諸国も難民を受け入れたり、民族・宗教・宗派を共にする同胞のために、軍事的に介入する可能性もある。レバノンのヒズボラはすでに介入しているし、半独立国家のような北イラク・クルド自治政府も介入を仄めかしている。

もしシリアの内戦が膠着し、シリア分解が現実味を帯びるとなれば、それは現在国家を持たぬクルド人が、イラクやシリアの一部からクルディスタンという国家を作り出すことになるかもしれない。もちろんそのような事態になれば、トルコが大反発することは必至。そして、それは中東全体の地図が変わることになる。そうなれば、非常な混乱を伴うだろう。数年後、中東はどのような形となっているだろうか。