読書日記 | Austerity Britain, 1945-51

2009年9月9日

David Kynaston, Austerity Britain, 1945-51 (London: Bloomsbury, 2008)

600ページを超える大作で、著者が第2次世界大戦終結の1945年からサッチャー政権誕生の1979年までの4部作の最初の本で、アトリー首相率いる労働党政権時代を扱っている。

英国は戦勝国ながら国力は疲弊して、超大国・一大帝国の立場から陥落、そして国民は配給制下で厳しい生活を送っていたが、労働党政権は新しい住居の建設や「ゆりかごから墓場まで」の社会保障制度の確立を目指し、また基幹産業の国有化政策を押し進めた。新しい英国が形成された時代だった。

この本は政治史というよりも、英国人がどのようにこの時代を生きたのかを探っている。そのため、世論調査やインタビューの記録などを多用している。人々の日常生活での経験はやはり階級や職種や地域によって違ったが、福祉国家の樹立には広範な国民的合意があった。

サッチャー革命までの英国の土台を築いた時期でもあり、英国の現在の国家の姿を知るうえでも、非常に有益な本だ。