短評 | Britain in the Middle Ages: An Archaeological History

2009年4月28日

Francis Pryor

Britain in the Middle Ages: An Archaeological History

London (Harper Perennial), 2007 [Originally published by Harper, 2006]

ISBN: 9780007203628

「考古学」とはいい響きの言葉だ。そして考古学を、「遥か昔のことを研究対象にしている学問」と考えるのは、古く偏見に満ちたもの。例えば、近代の産業遺産なども考古学の研究対象となっている。イギリス中世史を考古学的視点から見直す本を歴史を勉強する側から読んでみた。

歴史は遺文中心の机上の学問で、美術史や建築史などの知識も必要とされるが、考古学のように実際にものを発掘して研究するわけではなく、考古学に対し偏見があったり無関心だったりする。また歴史学と考古学には、結構な溝があり、縄張り争いのような面もある。

この本は肩肘張らず、考古学がどのようにして知識を得て、過去を理解するのかを、例を用いて丁寧に説明している。時代区分も古代と中世、中世と近世の断絶を強調するよりも、どのようにして古代文明が中世に残り、また中世がいかに現代と通ずるところがあるかを説く。

遺文遺産がないということは、歴史学者考古学者にとって大変だ。文章や建物が残っていないから、何も書かれなかった建てられなかったという結論は出せない。ものは失われるし、建物の材料も変わる。中世の史料が少ないのは、文明や技術の後退で済ませられるわけではなく、石造から木造の建物の移行があったりと、建築材の変遷や通商の面から説明しうるという。

題名には Britain とあるが、実際には研究が進んでいるイングランドを中心に語られている。中世は隔絶した小村落のみの「暗黒時代」ではなく、硬貨や遺物からアラブ世界とも通商があることがわかり、ローマ時代からの道路もまだ使用でき補修していたりと、開かれた社会だったとしている。

やはり書物だけでは得られない知識があると改めて痛感し、中世を歴史学的に定義するのではなく、考古学を基に再考するのは、新鮮に映った。