読書日記 | The Unfree French

2009年9月12日

Richard Vinen, The Unfree French: Life under the Occupation (London: Penguin, 2007)

フランスの歴史でも第2次世界大戦についてはいろいろな評価があり、研究の対象となっている。

ヴィシー政権下とドイツ占領下のフランス人の体験は千差万別だった。1940年に捕虜になって、ドイツの捕虜収容所で戦争を過ごした軍人もいれば、ドイツにとって戦況が悪化するにつれ労働者として強制的に連行された人もいた。フランスに残った人々も、ドイツに協力的だったり、武装抵抗(Maquis, Résistance)を試みたり、とにかく目立たないように気をつけたり、いろいろな行動を取った。

ヴィシー政権とドイツの直接占領下にあった北部と西部フランスの違いについて、もう少し説明が必要だったと思うが、抵抗か協力かの善悪フランス人しか存在しなかったという単純な区別はできないことははっきりしてくる。また、ド・ゴールの自由フランスによるフランス解放といういわば「神話」は、フランス人皆が事実と異なっていたことを知っていたからこそ、意味があったと主張している。

一般的にフランス国籍を保有せず、低所得者ほど、連行されたり、犯罪を犯したり、売春で生計を立てなければならず、対独協力者の中でも、生活上そうせざるを得なかった人が多かった。弱者は後に回想録を書くこともなく、埋もれてしまうことが多いので、このような研究は貴重だ。