どんな珍味でも毎日食べていたら、そのうち飽きるだろう。面白かったり楽しいことでも、繰り返せば慣れてしまい、だんだんつまらなくなる。新鮮味がなくなり、当たり前になってしまう。昨今流行の期間が短くなってきた。すぐに消費されて、世は次の流行に飛びつく。目移りする飽食の時代。
芸やギャグなどいわゆる「一発屋」にとって、非常に難しい時代になったような気がする。私が子供の頃、一発芸やギャグは主に「テレビで見る」ものだった。一度火が付いて売れれば、学校でみんなが知っていてクラスのお調子者が真似をするようになったりして、半年や1年の間はメディアに露出する賞味期限があった。一生分には程遠いかもしれないが一攫千金を狙えた。今や下手すればブームは数日で終わり、次の週には忘れられている。余談になるが⋯⋯「売れる」という肯定的な事象の反対にある「炎上」も、毎日次々とあちらこちらで火柱が上がるようになって、多くの場合数日で自然鎮火する。問題は癒えない大火傷を負ってしまう可能性があるのと、未来永劫インターネット上に残って掘り起こされてしまうことか。閑話休題。SNSや動画共有サービスが多数あり、スマートフォンさえあれば、誰でも簡単に投稿できて、誰でも瞬間的に有名になれる。量が劇的に増えたこともあるが、簡単に繰り返して再生できるようになったのも理由ではないか。飽きるまで見続けることができる。
昔でもビデオテープに録画して、繰り返し見ることもできただろうが、今のようにスマートフォンで勝手にループして流れるのと比べると、手順があって面倒くさかった。まず録画しなければならなかった。一度見終わってもう一回見たければ、停止してテープを巻き戻す必要があった。電子データではなく物理的な記録媒体なので場所を取っていたし、消耗品であり最終的に文字通り擦り切れてしまうものだった。そのため「次はいつ見られるだろう」と新聞に載っている番組表で確認したりして、テレビの前で待っていた。待つことによって「来るぞ、来るぞ」と更に期待が膨らんでいた。そして一発芸・ギャグが披露されたら「来た!」と喜び、次の機会を楽しみにしていた。飽きるまでは。今はループで待ち時間なしで数十回数百回連続して見ることができて、すぐに飽きる地点に到達してしまう。
もはやぼんやりとテレビを見ていて、何気なく新聞を読んでいれば、大体の流行を把握できる時代ではなくなった。流行が細分化・界隈化されたというか、分断されて局地的になった。これはネットとリアルやネットとテレビ・新聞などの既存メディアの分断だけではなく、ネット上の分断もある。SNSプラットフォームはできるだけユーザーを囲い込みたい。競合相手に流れてほしくない。それもあって、一つのプラットフォームで多数のフォロワーや数百万回・数千万回・数億回の閲覧数を誇っていても、他のSNSで同等の影響力があるとは限らない。例えば TikTok でバズったから YouTube ショートや X でも同程度にバズる保証はない。また YouTube でも横長動画は視聴されるのにショートだとからからっきしだったりする。
今後一世を風靡できる一発屋はどのような現れ方をするだろうか。