英語ノート | Hobbesian frenzy

2008年11月29日

アメリカのニューヨーク・タイムズ紙の記事にある表現だから「米語」と言うべきだろうか。朝日新聞でも報道されているように、感謝祭明けの年末商戦開始を告げる「黒の金曜日」早朝に、多くの買い物客が集まり、ドアが開いた途端、店内に雪崩れ込み、派遣の従業員が踏み倒され圧死するという事件が、ニューヨーク近郊のウォルマートであった。「黒」は悪い意味ではなく、年商の4割を占める年末商戦の始まりで、小売業が黒字に転ずるのがこの日のため、黒の金曜日と呼ばれる。

この記事を執筆した記者は、買い物客の行動を Hobbesian frenzy と評している。Hobbesian は Thomas Hobbes に関連するという意味。買い物客の行動に bellum omnium contra omnes (万人の万人に対する戦争)という Hobbes の言葉を当てているのだろう。倒れた従業員を顧みず、救護しようとした同僚や到着した警察官を押しのけてでも、バーゲン商品を得ようとする現代人が大型スーパー店舗において自然状態に陥ることを皮肉に言っているのだろうが、一言余計な気がする。Frenzy で充分ではないだろうか。またコンマの後の部分が本当に記事に必要なのかも疑問。