首相と解散権

今日2017年6月8日は英国総選挙の投開票日。以前は、英国の首相に実質的な解散権があったが、2011年の法律で議会の任期は5年と決まり、解散という事態が発生するのは任期満了以外に、(1)不信任決議が可決され、可決後14日以内に新しい政府が信任されない時、または(2)議会の議席数の3分の2で解散決議が可決された時。前回の総選挙は2015年に行われたので、任期満了は2020年だったが、メイ首相が議会解散の意向を示し、最大野党の労働党が合意したことで、3分の2以上となり解散となった。一応、英国政府は「女王陛下の政府」なので、解散権は英国首相が国王の権限を代行するような形で行われていたため、国王にある行政権が議会に移譲された形となり、一部では英国の政体と憲法の議論の的となった。

ドイツでは首相に解散権はない。そして内閣不信任案を提出する際には、後継首相を指名しなければならない制度となっている。しかし、1983年にコール氏、2005年にシュレーダー氏が連邦議会を解散するため、信任決議案を提出して、与党が否決して内閣不信任として、解散に持ち込むという手法を用いている。

同じく議院内閣制の日本で首相の立場が強いのは、やはり内閣を構成する閣僚を決める人事権、そして衆議院を解散する力があるため。日本では首相が時機を見て解散することは、これまで多くあったので、慣例として定着しているが、個人的にはあまり好ましいことではないと思う。選挙が頻繁にあることはあまり良くないし、政治は数年先、場合によっては数十年先のことを見据えて行わなければならない。

解散権を有するということは、自分にとって好都合の政局で解散する機会を、首相そして与党議員は常々意識することでもないだろうか。任期満了に近づけば近づくほど、時間はなくなり、解散する機会も減るだろう。それならば、できるだけ自分に有利な解散時期のために、政局を探し、また作り出そうとするだろう。それでは視野がどうしても短期的になってしまう。

もちろん、英国でも政府・与党が不信任決議を用いて議会を任期満了前に解散する可能性もあるし、日本で規制しようとしても、同じように解散したければ与党が不信任決議案を可決あるいは信任決議案を否決すれば良いだけのことになるだろう。

そのため、法や慣例による解散権の規制には無理があるかもしれないが、首相による解散権発動は「本当に必要で例外的な場合に限られるべき」という意識変革は可能かもしれない。