めでたく思い上がった欲情のエッセンス

何かネットで調べものをしていると、次から次とウェブページや動画を閲覧し、そのうちに脱線してしまい、全く関係のない所に至り、多くの時間を費やすことがある。新知識を得るということもあり、決して時間の無駄ではないことが多い。

なぜそこに落ち着いたのか⋯⋯よく覚えてないが、青空文庫で公開されている中原中也の『我が生活』という随筆があった。歌舞伎見物に行き、他の観客についてこのように認めている。

歌舞伎通なんてのはみんな目出度くおもひあがつてるものだ。あの感情はなんとも云へない。俗情のエッセンスだとでも名付けるよりほかはない。私は歌舞伎を観るたびにそれが嫌ひだ。チツポケな虚栄心を持つてるに過ぎない奴等が、いつかどのきほひ肌や、伝法肌のつもりになつて得々としてるのだ。

出典 - www.aozora.gr.jp/cards/000026/card55785.html

歌舞伎だけではなくて、ありとあらゆる芸術、スポーツ、そして学問にもこの浅学の通ぶり知ったかぶりは当てはまるだろうか。今年はこれまで芸術鑑賞やスポーツを観戦してきたが、無知であるのと表現力不足、そして時間があまりなかったことが重なり、どうも記事を書いてこのサイトに載せることができずにいる。もし書くとなれば、めでたく思い上がった欲情のエッセンスで、ちっぽけな虚栄心を満たすだけだと、半ば自覚して半ば自戒するところ。ただ得々だけにはなりたくないなと思っている。