PizzaExpress: Pizza Veneziana

チェーン店レストランの最大の強みというか売りは、どの店舗でも同じメニューがあって、当たり外れがない安定感だろうか。安定感が安心ひいては信頼を生む。ロンドンそして英国中にあるピザのチェーン店 PizzaExpress は、両親と一緒に行ったこともあれば、友人と行ったことも。必ずしも第一候補ではないかもしれないが、他に良い所が見つからなかったり、時間がないとき、気軽に行けるようなレストラン。気軽かもしれないが決して安いというわけではなく、ほとんどのピザは10ポンドを超えるし、ノンアルコールの飲み物とチップを入れたら、一人20ポンド近くが目安になる。またピザ以外にもパスタやサラダもメニューにある。内装は白と黒のタイル張りの店が多く、従業員は囚人でなくて恐らく船乗りをイメージしたのではないかと思われる横縞の制服を身に纏っている。

メニュー全てを試したわけではないが、辛いソーセージである nduja が乗っている Calabrese, そして最近は Veneziana を気に入っている。イタリア語で calabreseveneziano / veneziana はそれぞれ「カラブリアの・ヴェネツィア(市民)の」という意味で、カラブリア風ピザ・ヴェネツィア風ピザと言ったところだろうか。カラブリア州はイタリア半島の爪先の部分で、ヴェネツィアは北東部にあるので、正反対の位置。

この Pizza Veneziana だが、好き嫌いが分かれ万人受けする味ではないかもしれない。具は松の実・赤たまねぎ・ケッパー・黒オリーブ・レーズン・モッツァレッラ・トマト。菜食主義者でも食べられるピザ。オプションとしてアンチョビーを加えることができる。別に菜食主義者でもないし、ヴェネツィアは海に面する都市だから、というこじつけでしかない理由でアンチョビーを追加している。さらにこじつければ、アンチョビーがあると、他の具との対比となってそれぞれの味を最大限に引き出せると思い込んでいる。

ピザに果物を乗せることでは、パイナップルが具となるハワイアンが有名で、賛否両論がある。このように果物を混ぜるのに、何かしら抵抗感を抱く人も多いかもしれない。でもこの Veneziana の場合、レーズンなので、大きさは松の実やケッパーと似たくらいで、ちょっとしたアクセントといった感じ。そして、果物を積極的に主菜に混ぜて使うのは、中東料理の特徴の一つであるような気がする。交易の都市だったヴェネツィアは、西欧(オクシデント)における東方(オリエント)だった。そんな歴史を凝縮したピザなのだ⋯⋯というのは考えすぎだろうか。

なお、このピザの値段には Veneziana Fund という基金に25ペンスの募金が含まれる。もともとはヴェネツィアの洪水被害の復興支援が目的だったが、現在ではいろいろな事業を支援しているらしい。