英国の欧州連合離脱と英仏の力関係

ロンドンのウェリントン・アーチ

もし「凱旋門」という単語を聞いたら、どの建造物を思い浮かべるだろうか。多くの人はフランス・パリにあり、ナポレオンが建設を命じたエトワール凱旋門を連想するのではないだろうか。しかしフランス革命戦争・ナポレオン戦争で一貫してフランスと敵対して、戦勝国の一角となったのは英国。エトワール凱旋門が完成したのは、ナポレオンの死後である1836年だった。英国の対仏戦争の英雄は海のネルソン・陸のウェリントン。トラファルガー広場にはネルソン記念柱、ハイド・パークには写真に写っているウェリントン・アーチがある。19世紀前半に建立された時、大きなウェリントン公爵の騎馬像がこの凱旋門上にあったので、ウェリントン・アーチという名前が定着した。でもその騎馬像、非常に大きく門には不釣り合いだったので、不評を買っていたという。ハイド・パーク付近の交通量が多くなったので、1883〜5年にウェリントン・アーチは現在の位置に移された。その移動時にウェリントン公爵の騎馬像に代わってクアドリガが設置されて現在に至る。

先日、快晴のロンドンの中心部を散歩して、ウェリントン・アーチを潜った際、

「英国の欧州連合離脱で、ナポレオン戦争後200年以上続いてきた英国優位の英仏の力関係が逆転するかもしれない」

ということを、国際情勢に詳しくどちらかというと物事を悲観的に捉える性格の英国人の知人が言っていたことを思い出した。国連安全保障理事会常任理事国であり核保有国であり植民地支配という過去を持ち文化面の影響力で似たようところが多い英仏。実際にそうなのか、異論輿論ありそうだが、総合的な国力で一歩リードしているのは英国だという。しかし欧州連合離脱によって英国は今後孤独の道を歩み、フランスは経済大国ドイツとの関係を深めて欧州連合の統合を加速させるのではないか。英国の欧州連合内での発言力はなくなり、フランスの発言力は増す。トランプ氏ではない次期米国大統領はヨーロッパにおけるパートナーとして英国よりも仏独を選ぶだろう。そして他の国や地域も英国よりも欧州連合・単一市場を重視するだろうと。

スポーツでも他の事でも「フランスだけには負けたくない」という英国人はいる。大抵の場合は敵意というか悪意や憎悪などない良好健全なライバル関係。でも比較対象なので、もし欧州連合離脱の結果として、英国が目に見えて経済的に外交的にそして国としての影響力でフランスに劣るようになったら、英国人と社会はどのように反応するだろうか⋯⋯。