英語ノート

Afgodness

何を調べていたのか、よく覚えていないが⋯⋯最近 Google ブックスで次から次へ全く関係のない本を読んでしまった。私にとって Google ブックスは YouTube や Google マップ同様一度見はじめると、いつしか最初の目的を忘れてしまい、何時間も閲覧してしまうサイト。

なぜだか The Law-French Dictionary Alphabetically Digested (books.google.com/books?id=4j9WAAAAYAAJ) という1701年に出版された辞書に辿り着いた。ノルマン征服後のイングランドでは数世紀にわたって、政治や行政や法律でラテン語や支配者層の言語だったフランス語が用いられていた。時が経つにつれて英語に置き換わっていったが、法関連では Law French が書き言葉として長く使われ、先例が重きをなすコモン・ローにおいて、この特殊なフランス語を英訳した辞書に当時需要があったのだろう。

載っている単語の多くはフランス語だが、目に入ったのは afgodess (books.google.com/books?id=4j9WAAAAYAAJ&pg=PP13) という単語。フランス語ではなく古英語。他に例がないか調べていたら afgodess ではなく afgodness という形で、1671年刊行の Etymologicon Linguæ Anglicanæ (books.google.com/books?id=ksRMAAAAcAAJ&pg=PP657) や1732年刊行の An English Dictionary (books.google.com/books?id=Lk1gAAAAcAAJ&pg=PP16) という辞書に項目としてあった。最初に見つけた afgodess は誤植だろうか。

上記の辞書によれば afgodness の英訳は impiety, ungodliness で「不信心・不敬虔」という意味。ただ Etymologicon Linguæ Anglicanæ は、不信心・不敬虔という幅広い意味という意見もあれば、狭義に教義に反する偶像崇拝を指す声もあるとしている。この afgodness は現在の英語の辞書に載っていないかもしれないが、狭義の「偶像崇拝」を意味するオランダ語の afgoderij やドイツ語の Abgötterei にあたるのではないかと考えている。ドイツ語の Abgötterei はマルティン・ルターが使っていたような表現で、辞書に載っているが、今「偶像崇拝」として使われている単語は主に Götzendienst で、同義の英単語は idolatry だ。