長い一週間:2020年米国大統領選挙

先週はやけに長かったような気がする。投票日から凡そ1週間が経った米国大統領選挙を連日注視していたため。誰が米国という経済的軍事的超大国の次期大統領となるかは非常に重要なこと。

まだ全州の結果が出たわけではないが、民主党候補ジョー・バイデン氏が選挙人の過半数を確保して、次期大統領になるのは確実。共和党の現職ドナルド・トランプ氏がこの結果を覆すのは事実上不可能。理論上トランプ氏が勝つには、まだ当確報道のない残りの全ての州で勝利を収め、かつ既に選挙結果が出ている州の結果を法廷闘争でひっくり返す必要がある。しかしバイデン氏はまだ結果が出ていないジョージア州とアリゾナ州で優勢なので、トランプ氏は複数の州での結果を逆転させないといけない。2000年大統領選挙のように1州の数百票差で決着するのとは全く違う。

現職大統領が再選を目指して負けたのは1992年のジョージ・H・W・ブッシュ氏以来で、大統領が所属する政党が1期で交代するのは1980年のジミー・カーター氏以来。いかに現職大統領という立場が有利なのかを物語っているのかもしれないし、新型コロナウイルス感染症という状況がなければ、今回の大統領選挙はどうなっていただろうか。

通常これほど明らかな差がある場合、敗者は敗北を認め、次期大統領への政権移行の手順を踏むところだが、トランプ氏は違う。これがトランプ氏がトランプ氏たる所以だろうか。しかし不正があったと主張するだけでは、そのうち信用されなくなる。熱心なトランプ氏の支持者は追随するだろうが、支持者の少なくとも一部は離れていく。再集計や法に訴えるには費用がかかる。有言不実行では信用を失う。一方有言実行で莫大な額を投じて、再集計をして負けて敗訴すれば、敗北がより明白になる。トランプ氏とトランプ氏の支持者はいずれ現実を受け入れなければならないだろう。それとも民主主義を否定するのだろうか。

トランプ氏が敗北を認めないことの最大の問題は、米国の選挙の公平性や正当性を疑問視する声を強め、民主主義の根本を揺るがすこと。米国の民主主義は脆弱ではないと思うが、盤石ではない。バイデン氏は次期大統領として、米国にある深い分断を乗り越えられるだろうか。そして民主主義の基盤と法の支配を強化することはできるだろうか。