ヨーロッパ | パン比較

2008年10月30日

英国のパンはおいしいという変な考えが日本で散見されるのは、あのこんもりとした山型の分厚く切られているパンがイギリスパンと呼ばれているせいだろうか。長く住んでいると、主にトーストやサンドウィッチに使われる英国の白パンというのは、ぱさぱさそしてすかすかしていて、あるいは塩が必要以上に使われているなど、概して不味いということがわかってくる。日本の「イギリスパン」は英国にない。もちろん個人の好き嫌いもあるだろうが、ヨーロッパの他国と比べるとどう贔屓目に見ても英国のパンは不味い。

これからスウェーデンに2ヶ月ほどいる予定なのだが、近くのスーパーで買ったパンは全粒小麦・ライ麦など数種類の穀物が原料となっている(写真)。ドイツもそうだが、茶色か黒で噛めば噛むほど味が出てくるパン。特にサワードウ(Sauerteig)を使ったパンは酸味があり、とてもうまい。食物繊維が多く健康的ということもあるかもしれないが、それ以上に味がよく満腹になる。チーズやパテを乗せれば、何枚も食べてしまい、朝昼晩続けてパンということもあるので、主食となるパンがうまく安いというのは助かる。薫製など加工された鮭や鰊を多く売っているスウェーデンなので、さらに食欲がすすむ。

いずれにせよ英国外のヨーロッパの国にいると、パンがうまく感じられる。そのため過去にドイツから英国に行くときにライ麦・小麦パン2キロを買って運んだこともある。在英ドイツ人へのお土産として重宝される。ドイツのパンは長持ちするのでそのようなこともできるが、フランスの場合は無理がある。バゲットなどのフランスパンは小麦粉・塩・水・酵母のみで作られ、外皮がちょうど良い具合に固く、職人芸を感じさせるし、また菓子パンもよくできているが、できるだけすぐに食べたほうがよいのでそう持ち歩くわけにもいかない。

最近は英国のスーパーでも多くのパンが売られるようなってきているが、それでもまだ英国と大陸には大きな差がある。食に対して無関心・無頓着の英国人にしてみれば大したことはないかもしれないが、多くのヨーロッパ人にとってパンを大事にするか疎かにするかは文明の差を表している。