Faux amis | 英蘭仏独語比較

Transport

“Faux amis” とは、綴りが同じあるいは似ているのに、言語で意味が違う語句のこと。例えば、仏語の librairie は「本屋」だが、英語の library は「図書館」というように。

数週間前のことだが、蘭語の transport は英語の transport と同じかと訊かれた。蘭語に詳しいわけではないので、何を意味するのか説明してもらうと、どうやら物品の輸送のことで、この場合はトラック運送会社の名前の一部に利用されていて、英語の (road) haulage に当たるようだ。蘭語の transport は人の移動に使われないらしい。

英語の transport は物資輸送にも使われるが、どちらかと言うと人間の移動に使われる交通機関という意味合いでよく使われる。良い例となるのが、電車やバスなどの「公共交通機関」を英蘭仏独各言語で比較すること。そうすると、英仏と蘭独で違いが出てくる。英語では public transport だし、仏語でも transports en commun だが、蘭語では openbaar vervoer となり、独語では öffentliche Verkehrsmittel である。

気になったので、英語では物の輸送を意味し、人の移動には使われない haulage がどう訳されているか、少し調べてみた。英蘭辞典で haulage を引くと vervoer と transport と出る。英独辞典を紐解くと Transport で、運送会社 haulage business は Transportunternehmen もしくは Spedition(sfirma) とある。そして英仏辞典を参照すると haulage は transport routier, camionnage そして roulage という仏語の訳が掲載されていて、運送会社 haulage company は entreprise de transports (routiers) となっていた。

少しややこしいが、整理すると、どうやら仏語では、人と物の輸送はともに transport だが、英蘭独語の場合は、人と物の輸送には何かしらの区別があるようだ。英語では、人の移動には transport が使われ、物の場合は haulage が利用される。蘭語と独語で transport / Transport は一般的に物の輸送に使われ、人の移動の場合は違う語句が利用されている。

蛇足になるが、米語では transport ではなく transportation が一般的で、公共交通機関は public transit か mass transit だろうか。