エジプトと中東情勢

2011年1月29日

エジプトでは大規模デモが続いていて、結果が弾圧成功による政権維持か、交渉による政権移行か、それとも政権崩壊か、ここ数日で趨勢が決まるだろう。もしエジプトの現政権が崩壊すれば、中東情勢は混沌とし、アメリカの中東政策は根本から覆される。

アメリカのこれまでの中東政策はエジプトやサウジアラビアなどの強権政権や世俗・民主的なトルコといった、親米でイスラエルという国家の存続を認める国々を支えることに依っていた。ちょっと強引だが、アメリカとイスラエルはセットできた。そして体制が民主主義かどうかは関係なかった。イラク戦争を民主主義の名で正当化しつつも、強権政権のサウジアラビアを支持し、ガザの人々が選挙によってハマスを選べばダメだというように。しかし、最近トルコはイスラエルからかなりの距離を取るようになったし、もしエジプトのムバラク大統領政権のあとに鮮明な反イスラエル政権ができたら、アメリカは苦慮することになるだろう。

もちろんこれはステレオタイプだが、中東の多くの場所、特にイスラエルと国境を接したり、過去に戦争をした国々での一般市民の反米・反イスラエル感情は非常に強い。特に反イスラエル感情はもう「憎悪」としか呼べないほど。エジプトやサウジアラビアやシリアなどが民主化して、イスラエルに対して強くでた場合は、周辺の独裁国家に果敢に抗するイスラエルという構図は消えてしまう。そして、選ばれるためには、民衆迎合型の反イスラエル主義を声高にすることもありえる。

もっとも民主化されても、これまでイスラエルに利していた状況は変わらないとも言えるだろうか。まずは中東諸国間の利害が衝突するため、反イスラエル連合ができにくいこと。そして中東諸国の多くは経済問題を抱えていれば、宗教や民族問題も抱えている。例えばレバノンはその複雑な問題を如実に現している。

次に何が起こるか分からないが、中東は今後さらに予測がつかないようになりそうな気配に満ちている。