英国国債格下げとイタリア総選挙

ヨーロッパ各国の財政と経済には、未だに回復の兆しはあまり見られない。統計で計る経済、そして目で見て肌で感じる経済、両方でまだまだ不景気が続いていて、これからも続きそう。そして、ヨーロッパの各国政府は、現在の閉塞感を打破する策を見出していない。それを端的に表したのが、ムーディーズ社の英国国債格下げと、下院では中道左派が勝利したが、上院では過半数に届かず、安定した政権の発足に黄信号が灯ったイタリア。

格付け機関自体あまり信用に値しないのかもしれないし、これから英ポンドが暴落したり、国債が売れなくなるということにはならないだろうが、2010年総選挙以来政権の座にある保守・自由民主連立政権は、緊縮財政を推し進めてきたので、今回の格下げは政治的な痛手。これまで、AAAを維持してきたことを、痛みが伴っても、中立的な機関から評価されている、正しい方針であると主張してきたため。実情は、財政赤字は減らず、経済成長もないという厳しい状態にあるし、これから中期的に財政問題となりかねないが、短期的には政府にとってはかなり厄介な政情となりかねない。野党には追及されるし、メディアからも叩かれるだろう。しかし、野党の労働党の財政政策はあやふやであり、これから大転換で、大規模な財政出動ということもないはず。これから歳入が急速に増えることはないだろうし、多額の国債発行や量的緩和やポンド安政策には限度があるので、現実的ではないため。ただ、これから政府は社会保障費を削るなど緊縮財政の中でも、公共投資を行うことを強調するだろう。いずれにせよ、政治にできることには、限りがありそうだ。

イタリアで安定した政権が発足せず、近くに再選挙となったりすれば、単一通貨ユーロへの不安が再燃するだろう。市場やヨーロッパの他国が期待していたのは、ベルサーニ氏率いる中道左派連合とモンティ氏率いる中道連合が上下両院で過半数を占めることだっただろうが、結果は反既成政党で反緊縮財政の「5つ星」の大躍進によって、上院では中道左派連合と中道連合だけでは、過半数に遠いねじれ国会となった。これから中道右派を率いて返り咲きを狙ったベルルスコーニ氏の出方にもよるだろうが、ユーロ圏の他国にしてみれば、頭痛の種がさらに増えた。政治的にできることは、財政状況によって限られている。そのため、政治そして政府ができることはあまりないのかもしれないが、政府がなかったり、先行きが不安であれば、政治は状況をさらに悪化させることがある。

さて、長い目で見た場合、今回の英国国債格下げとイタリア総選挙の結果は、重要なのだろうか、それとも特筆に値しない些事なのだろうか。どちらとなるか、これは数年あるいは数十年待たなかれば、分からないだろう。