天皇の政治利用 | 2

2009年12月15日

来日中の習近平中国国家副主席が今上天皇と「特例」として会見する問題は、未だに収拾つかずの状態。政治家としての才能は支持者も反対者も認めている小沢一郎氏の記者会見は火に油を注ぐようなものだった。

今でもこの特例措置は誤断だと思っている。理由は『天皇の政治利用』でも述べたが、特例とするだけの理由がないからだ。中国はもちろん大きな国で、日本からしてみれば、日米関係の次に重要な外交相手であり、重視するのは当たり前。しかし国家副主席は国家元首でもなく、今回の習近平氏来日は緊急事態でもなく、慣行を破るほどな「特別な理由」には当たらない。それでも会談が実現したのは「中国だから特例」という鳩山政権の政治的判断によるものであり、その結果この会談は天皇の政治利用と言ってよい。「特例」というからには、この慣行の効力はまだあり、今後他国の首脳が1ヶ月以内で天皇との会談を要請したとき、この慣行を理由に断ることができると理解してよいだろう。つまり今回の特例は日本内外に中国だけを特別扱いしていることを示してしまった。国と国の関係は平等が基本なので、「中国だから特例」ではなく、「以上の理由をもって特例」というようにどの国にも当てはまる基準でなければ、外交上非常にまずい。

憲法でもなく法律でもない慣行や慣習に拘束力はなく、このような慣行を内閣の政治的判断で都合良く無視できるというのはかなり危険な観点。慣行遵守は日本という国と政府の信用そして広義での法の秩序にもかかわることで、たとえ狭義での憲法解釈では正しくとも小沢氏の考えはとても共有できない。また羽毛田信吾宮内庁長官は辞表を提出後に政府に対する反対発言をすべきという意見も、これから政治的に厄介になりそう。そこまで小沢氏が言うならば、宮内庁長官の罷免権はおそらく首相にあるだろうから、羽毛田氏が辞任しなければ罷免するしかないだろう。

かなり尾を引きそうな展開だ。